そんな著者が4年の歳月をかけたのが『小説』です。主人公の内海集司は『走れメロス』で読書に目ざめ、『竜馬がゆく』で生涯の友・外崎と出会い、『ホビットの冒険』である屋敷に潜入します。そこではどれだけ本を読んでも叱られることはなく、二人にとっての黄金の日々が始まりました。
しかし、進学するにつれてその営みに意味を求められるようになっていきます。感想文を書け、論文を書け。書くことが苦手な内海は、いつしか「読むだけじゃ駄目なのか?」と深く悩むようになりました。
旅路の果てに内海がたどり着いた答えに、私は涙が止まりませんでした。本作を小説を愛する方々に捧げます。
──文芸第二単行本編集チーム 大曽根幸太