朝霧さんの強みはなんといっても、鋭すぎる人間観察眼。作中の担任教師とのエピソードにはギクッとさせられ、大人としての自分のあり方を振り返ってしまうことでしょう。
しかし、本作は単に大人の欺瞞や青春の暗部を暴くだけではありません。今を生きる若者のリアルな本音を見せつけられると同時に、人と繫がろうとする尊さを思い出させてくれる一冊でもあります。序盤から静かに組み込まれた、ある“切実なメッセージ”にはラストで泣かされること間違いありません。
青春を終えた人、只中にいる人、全世代に刺さる「後悔」と「救済」の物語。「声を大にして」お薦めします!
──小説現代編集チーム 川原桜