戦後80年に親子で読みたいかこさとしさん“幻の遺稿”が絵本になりました
かこさとしさん(1926-2018)が約70年前に書いた未発表原稿『くらげのパポちゃん』が見つかったとの報道があったのは2023年の暮れ。すぐに「原稿を見せてください」とお願いし、絵本化へと動き出しました。
文章のみであった原稿は、孫の中島加名(かめい)さんに絵をつけていただくことに。幼少期よりかこさんのそばで育った加名さんですが、挿絵の経験はあるものの、絵本の絵を描くのは初めてとのことです。パポちゃんの姿や海の景色の変化など、打ちあわせを重ねて少しずつ形にしていきました。
戦争で亡くなった少年の父を探しに、くらげが大海原を旅する物語ですが、戦争の犠牲になった人々への深い祈りともとれる本作。晩年、「戦争の本を作りたいが、なかなかできない」と話していたかこさんの心に、ずっとあった作品でした。
2月5日の発売当日には、小学生を対象とした読み聞かせ会を行いました。かこさんが強く願った平和への想いが、世代を越えてたしかに届いていく様子を目の当たりにすることができたのです。この想いが途切れることなく、これからを生きる子どもたちへと繫がっていきますように。
──幼児図書編集チーム 曽小川 瞳



1926年現在の福井県越前市に生まれる。
工学博士、技術士(化学)。東京大学工学部卒業後、化学会社に勤務しながら、ボランティアで子どもたちと関わり、『だむのおじさんたち』で絵本作家としてデビュー。
『だるまちゃんとてんぐちゃん』、『からすのパンやさん』をはじめ、『かわ』『宇宙』などの科学絵本も含め、著作は600冊以上に及ぶ。
菊池寛賞、日本化学会特別功労賞、巖谷小波文芸賞など受賞多数。2018年5月没