本書は、そんな「キレる子ども」に悩む保護者に向けた実践的ガイドブックである。25年以上の臨床経験を培ってきた著者(長野県立こころの医療センター駒ヶ根・子どものこころ診療センター長の原田謙氏)が、さまざまなタイプの実例を挙げながら解決法を提示していく。
この本ではキレる子どもとの接し方として、「暴力・暴言の止め方」など、さまざまな対応方法を紹介していきます。それらの方法に取り組めば、子どものキレる行動は減っていくでしょう。
しかし、ただ方法を覚えるだけでは、十分とはいえません。たとえ合理的な方法でも、やり方をなぞるだけでは、いずれうまくいかなくなります。(中略)ノウハウを覚えるだけではなく、子どもと向き合いながら、対応を試行錯誤していく必要があるのです
怒りの感情を持つことは、決して悪いことではない。ただ、その発露の仕方が度を越していたり、弱いものに向けられたり、悪質な暴力として常習化したりすると、本人も家族も周囲も傷つくことになってしまう。そういう極端な状態を直そうとすること、つまり怒りをコントロールする術を身に着けるということは、逆に言えば人間的成長を遂げるうえでは絶好のチャンスともいえる。その道はとても険しいものではあるが。
子どもが「キレる」のは多くの場合、SOSの表現だ。なぜわかってくれないのか、なぜ自分のつらい思いを汲んでくれないのか、どうしてできないことを強制するのか、なぜ自分が正しいのに信じてくれないのか……そういった不条理への苛立ちが積み重なって、コントロール不能な「怒り」となって噴き出してしまう。だから、問題を解決する方法があるとすれば、子どもが「どうしたいのか」「本当は何を伝えたいのか」を知ることが先決だろう。そこでやっと道は切り拓ける。
子どもが落ち着いたら、あまり時間をあけずに「振り返り」の対話をしましょう。この対話の目的は、子どもに反省させることではありません。子どもがどんな気持ちだったのか、大人が理解することです。「悪いことだと思わなかったの?」などと詰問しないでください。子どもは基本的に、悪意を持って暴れているわけではありません。何か耐えられないことがあって、その気持ちが反抗的な言動として出ています。子どもの思いを汲み取ることを意識しながら、その子の言い分に耳を傾けてください。
暴力や暴言を止めれば危険な状況をひとまず回避できますが、それだけでは問題の根本的な解決にはなりません。
危機介入を行って状況を落ち着かせたあとには、その子が抱えている怒りを理解する必要があります。そして、その怒りをどうコントロールするのか、どう表現するのかを子どもに伝えていくことも、必要になります。







