主人公は神戸の物流倉庫に勤務する高見(たかみ)。新倉庫建設の工程管理を任されたものの、建設予定地の隣りに住む亀夫(かめお)という犬連れの男によるクレームのため、建設は思うように進まず。現場と本社命令の板挟みになりながら奔走するサラリーマンの悲哀が滲みます。
本作は2021年の群像新人文学賞に選出された作品ですが、当選作ではなく、次点である優秀作だったため、受賞当時は雑誌掲載のみ。3年の時を経て、紆余曲折「バリ」をしながらようやく単行本として刊行されました。仕事のままならなさを著者独特のユーモアで描く『カメオ』は、松永さんが芥川賞受賞会見などでもお話しされていた「オモロイ純文運動」の原点でもあります。
不条理をオモロく、そして疾走感をもって突き進んでゆく『カメオ』にもぜひご注目ください。
──群像編集チーム S.N.