カーボンプレートを試してみたい!
私は形から入ることが大好きなので、1kmがやっと、というタイミングでランニングシューズを探しに専門店へ行った。原宿にあるASICSの旗艦店で「すごく初心者です。何を履けばいいですか」と相談し、おすすめされたモデルは、とてもフカフカだが足首がグラつかない厚底シューズだった。そして同じく厚底シューズだがカーボン素材の高反発プレートが入ったモデルは中・上級者向けで、そう簡単に履きこなせるものではないことも教わった。
生まれたてのヒナが初めて見たものを親と慕うように、私はビギナーにも優しいフカフカ厚底シューズを愛用し、代々履き替えている。そしていつのまにか10km走っても平気な体になっていた。
やがて「もっと速く走りたい」という欲がでてきた。というのも、私が平日に走るのは朝起きてすぐの小一時間。その限られた時間に遠くまで行くには、速くなるしかないのだ。違う景色を見てみたい。
そこで思い出されるのはカーボンプレート入りのランニングシューズ。いつか試してみたい。でも恐れ多い。ということで『厚底シューズ時代の 新・体幹ランニング』に教えを乞うことにした。
著者はプロ・ランニングコーチで駅伝・マラソン解説者の金哲彦先生。本書を「市民ランナーが厚底シューズで安全に自己ベストを出せるための“教科書”としてまとめた」のだという。厚底シューズを履きこなすための知識と金言がつまっている。読むとトレーニングの大切さがよくわかる。
正しく着地できないとダメージを受ける
厚底シューズは従来の薄底シューズより反発力の高いのが最大の特徴。それは諸刃の剣であり、うまく使えばストライド(歩幅)が伸びてタイムも速くなりますが、上手に使いこなせないと強烈な反発力が仇となり、故障の誘因となってしまうのです。
厚底シューズでは、記録更新といった明るい面ばかりにスポットライトが当たりがちですが、長年市民ランナーを指導してきた私はその暗い面にも目を向けざるを得ませんでした。どうしたら厚底シューズで故障に泣く市民ランナーを一人でも多く減らせるか。そのことをずっと考えてきたのです。
厚底時代、膝や足首に代わって増えてきたのが、股関節や仙腸関節に故障を抱えるランナー。(中略)
厚底シューズの復元力&反発力を制御するには、膝まわりや足首の筋力のみでは不十分。
それぞれの動作の解説は動画つきなので非常にわかりやすい。例えば動的ストレッチの「足踏みエクササイズ」はこのポーズからスタートして、両手で壁に体重をかけながら、走りをイメージして左右交互にリズミカルに踏み込む。
実は、本書を読み始めたタイミングで、私もカーボンプレート入りの厚底シューズを手に入れた。いざ履いてみると金先生が大切にする「体幹ランニング」を実践しないまま走ったら、いつかケガをしそうだなあとヒヤッとした。なんというか切れ味が良すぎる刃物に触れるような危なっかしさがある。
そしてカーボンプレート入りと、そうでない厚底シューズでこの足踏みエクササイズを試すと、体に響く反発が少し違うことがよくわかる。カーボンプレート入りの衝撃が強い。
筋トレやストレッチというのは、毎日コツコツ続けてやっと効果を見せてくれる。非常に慎み深い存在だ。そのおかげで見過ごされがちというか、ちょっと油断すると「あとでいいか」なんて二の次にされたりする。でもおろそかにして走り続けたら、いつか手痛いしっぺ返しが待っているだろう。こんな危なっかしくも魅惑のカーボンプレートを手に入れたのだから、心してトレーニングを積みたい。