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2024.04.18

レビュー

「それ行けカープ」に合わせた体操で「健康脳力」滝昇り! 注目のストレッチ

「カープ愛」で健康に

高齢の家族に「運動してる?」と声をかけると「そうねえ……」と言葉を濁されることが多い。「頼みますから運動してください。体にいいんだから」と追い打ちをかけると「わかった、わかったから」という感じで、ときどき散歩をしてくれるようになった。散歩以上の運動にも取り組んでもらいたいが、さてどうしたらいいか。

やみくもに「運動はいいぞ?」と言ったって、きっと伝わらないだろう。子どもの頃に親や先生から「勉強しなさい。あなたのためになるんだから」と言われて勉強しただろうか、私は好きな科目しか手を付けなかった。年月を経て立場が逆転しているようだが、私がまだ彼らの「老い」を知らないことが、この話をさらに厄介にしている。「歳だからしんどいのよ」と言われたら、もうお手上げなのだ。

『大人のカープ体操 無理せず「健康脳力」滝昇り』は、そんな大人たちの悩みに明るく元気よく寄り添う一冊だ。カープとは、もちろんプロ野球球団の広島東洋カープのこと。応援歌『それ行けカープ(若き鯉たち)』に合わせて、全身を元気よく動かせる。フルコーラス3分24秒めいっぱい体操するのだが、立った状態でも、座った状態でも無理なく続けられるよう設計されている。

「カープ、カープ、カープひろっしま」とズンズン歌いながら体を鍛える。

大人のカープ体操の考案者であり本書の著者である石橋秀幸先生は、長らく広島東洋カープの一軍トレーニングコーチを務めた人物。そして広島県呉市のご出身で、もちろん子どもの頃から大のカープファンであり、本書の隅々からカープ愛とスポーツへの思いが伝わってくる。

大好きな球団を応援する、そうした気持ちで体操をすると、「歳だから仕方がない」と思っていたことなど忘れて体を動かすことができます。(中略)
動きを見て真似をすることは、視覚、短期記憶、反応のトレーニングになります。また、音楽に合わせて体操を行うことは、聴覚のトレーニングになります。心と体、脳を活性化させることが、フレイル予防に役立つのです。

最近よく耳にする「フレイル」とは?

ことに高齢者の場合は、病気ではないけれど身体機能や認知機能の低下がみられ、介護が必要になりやすい状態(フレイル)に近づいてしまうことも。フレイルは、自分で生活できる健康な状態と要介護状態の間に位置している虚弱な状態です。

士気が高まる応援歌に合わせて体操をして、楽しくフレイル予防をしよう、というのが本書のねらいだ。

カープの名投手をイメージして運動しよう

私も大人のカープ体操を実際にやってみた。

本書にはスマートフォン、PC、タブレットなどで視聴できる指導動画のリンクがついている。もちろん、動画では『それ行けカープ(若き鯉たち)』も演奏される。体操中のBGMとして活用するのもいいだろう。

そして、本の中では体操のそれぞれの動きが解説されている。動画で流れをつかみつつ、本でひとつひとつの動作のコツや意義を学んでいく。

この動きは1曲の間に5回登場する。なかなか忙しい!

できるところからコツコツやるが、熱い応援歌に応援されるので、最後までとても楽しい。なにより、応援中にフニャフニャした気持ちにはならないことが、体操との向き合い方にも良い影響を与えてくれる。自然と背筋がシャキッと伸びるのだ。応援歌ってすごいよ! 楽しいとわかったら、次は極めたくなるもの。

プロ野球のトレーニングコーチだった石橋先生ならではの、ていねいな指導が繰り広げられる。



どんな動作にも理論と意義がある。そしてページの右上にいらっしゃるのは、広島東洋カープOBの小林誠二投手。

そう、ただ『それ行けカープ(若き鯉たち)』に合わせただけの体操ではないのだ。ちゃんと野球(そしてカープ)を大好きな人のために作られている。こちらのページなんて最高だ。


カープの名投手に思いを馳せながら腰と肩を動かす! そして紀藤真琴選手のフォーム実演も!

そして石橋先生のこんな言葉に「そうだ、そうだ」と腕を組むカープファンが目に浮かぶ。

ファンは、カープの選手たちの弛(たゆ)まない努力を知っています。カープの選手たちが、12球団一を誇る練習やトレーニングをしていることを知っています。

カープファン耽溺の熱き体操指南書だ。

本書では、大人のカープ体操に加えて、脳を活性化させるゲームや、運動機能改善の指ストレッチなども紹介されている。体操によって運動と健康への熱意が湧いてきた人にぴったりだ。


こちらの指ストレッチをやってみると、私の場合は右手のほうが固いことに気がついた。利き手だし、シンプルな動きだからきっとスイスイ動くに違いない……なんて油断していたので、ショックだった。でも根気よく続けると徐々に動きがよくなってくるのでうれしい。こうした小さな手応えを見つけて喜び、自分を知ることが、運動を続けるコツだと思う。

さらに第4章「シニアの運動 常識・非常識」も見逃せないパートだ。体を動かすことの大切さや、どのくらいの強度がよいのかなど、シニアに特化した体調管理のコツが、最新のスポーツの知識をもとに丁寧に語られる。今すぐ家族に教えたい話ばかりだった。

スポーツは、子どもや若者やアスリートだけのものではなくて、どんな人にも大切で価値のあることなのだとわかる本だ。そして広島東洋カープの鮮やかな赤と力強い応援歌で元気が湧いてくる(私の妹がそれはそれは熱心なカープファンで、応援歌を無限に歌ってくれるので、彼女もこの体操を一瞬で気に入るにちがいない)。

レビュアー

花森リド イメージ
花森リド

ライター・コラムニスト。主にゲーム、マンガ、書籍、映画、ガジェットに関する記事をよく書く。講談社「今日のおすすめ」、日経BP「日経トレンディネット」「日経クロステック(xTECH)」などで執筆。
X(旧twitter):@LidoHanamori 

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