人生の締めくくりをリアルに描いた、注目の新刊3冊をご紹介します。
「高齢者(シニア)小説」シリーズ最新刊は抱腹絶倒の終活の連鎖!
エンディングノートや断捨離、墓活など、人生100年時代を迎えた日本では、いま終活が花盛りです。生きているうちは死ぬことを考えたくない、ご自身は終活を一切しないというお考えの内館さんが書くとどうなるのか。
高校時代の片想いの相手に再会しようという75歳の主人公、英太の自分なりの終活から、抱腹絶倒の終活の連鎖が始まります。
それにしても、私と彼女のデートは本当にあったことなのでしょうか……。妄想が記憶に改変されたかもしれず、真相は藪の中です。
──講談社文庫出版部 小林龍之
日本の家族を支え続けてきた「母」のリアル
デビュー以来ずっと移りゆく時代のシグナルを敏感に掬い上げてきた乃南アサさんの新作は、そんな家族を支えて時を重ねてきた母親たちにスポットライトを当て、これまできちんと描かれることのなかった彼女たちの切ない思いや、時に解放された真実の姿を浮き彫りにした連作短編集になっています。
どの作品も衝撃の結末が待ち受ける、ホームドラマとは対極の内容なのですが、知り合いと食事をしながらたまたま聞いた話や日常で目にしたなにげない光景をきっかけに、持ち前の想像力を駆使して丹念に描かれた物語は確かな観察眼に裏打ちされた細部が魅力をたたえて、他人事とは思えない家族劇にはらはらしながら読書の楽しさを満喫いただけます。
──文芸第二単行本編集チーム 中島隆
認知症がパワーアップしたらどうなる?
これは2023年1月に刊行された、にしおかすみこさんの『ポンコツ一家』を読んだ大先輩の男性が、LINEで送ってくれた生の声です。
にしおかさんが認知症の母、ダウン症の姉、酔っ払いの父との同居を決めたのは2020年のこと。同居し、にしおかさんが大黒柱となって生きるリアルな描写は、「凄絶だけど笑える」「涙が止まらない」「笑って泣ける」と大きな評判を呼び、10刷となりました(ちなみに冒頭の大先輩はお風呂で読んでてよかったと思うくらい泣いたそうです)。
そして同居2年目を迎えた一家のエピソードを綴ったのがシリーズ2冊目の『ポンコツ一家2年目』。すべてがパワーアップしています。「え、認知症がパワーアップしたらヤバくね?」と思われたあなた、そうなんです。パワーアップの中身を、ぜひ手に取って実感してください。
──フロンティア事業部 新町真弓