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2024.09.12

レビュー

【パニック症】動悸が激しい!息苦しい!けれど検査では異常なし──発作への恐怖・不安を軽くする本

パニック症(パニック障害とも呼ばれます)をご存知でしょうか。著名人が闘病中であることを告白するニュースで、その名を目にした方もいるかもしれません。しかし、人前に出て仕事をする人に限定した病気ではなく、発症に至るには様々な原因があります。

本書では、パニック症とはなんなのか、その具体的な症状や原因、そして治療法までをQ&A形式で簡潔に読みやすくまとめています。

パニック症とはなにか

私は以前、ライブ帰りのやや混雑した電車内でパニック発作のようなものを体験したことがありました。呼吸が苦しくなり、吐き気もあって動悸も激しく、電車を降りたい。でも次の停車駅はまだ先にある。そのことに恐怖を感じて脂汗まで出てきたのです。

本書ではパニック発作について

突然、激しい身体症状と、死の恐怖を感じるほどの強い不安が生じ、長くても30分ほどで自然におさまっていく発作的な症状

と定義しています。パニック発作は、10人にひとりが一生に一度は経験するくらい、それほど珍しいものではないそうです。一方でパニック症は100人中2~3人に見られる病気とのこと。ではパニック症とパニック発作では何が違うのでしょうか。

パニック症かどうかは、くり返し起こる発作の原因や現れ方、そして発作への不安の強さをもとに判断するそうです。もう少し具体的に言うと、パニック症と診断する前提として以下の条件があります。
・くり返す発作が身体的な異常や摂取したものの影響で生じる症状ではない
・予期せぬパニック発作が2回以上くり返される

そのうえで、以下の2つに当てはまることでパニック症と診断されます。
・発作への予期不安や回避行動が見られる
・パニック症とは別の、心の病気や障害によるものとは考えられない場合

予期不安とは、「発作が起こるのでは」という強い不安のこと。回避行動とは、発作が起こりそうな状況や行動を避けることを言います。

人前に出ることへの不安や恐怖からパニック発作を起こす場合は社会不安症の可能性もあり、日常の強いストレスから不安が生じる場合は適応障害と診断されるなど、パニック症と似たような症状でも異なる診断が下されるケースも。

本書では、こういった様々な病気も取り上げながら、パニック症への理解を深め、また正しい診断と治療を受けるために必要な知識や行動指針なども示してくれます。

パニック症はなぜ起こる?

不安や恐怖というのは、これらを感じることで、危険やマズい状況を回避できるという点でとても大事。ただ、過剰に感じ過ぎてしまうと厄介です。

「ドキドキする」など、少しでも変な感じがすると「よからぬことが起きているサイン」ととらえて不安になり、本来やるべきこと、したいことに注意が向かなくなります。症状の確認に一生懸命になるうちに不安や恐怖が高まり、それが症状を強め、さらに不安や恐怖が高まるという悪循環が生じます。

私は車酔いをするタイプなのですが、乗車中、ちょっとした違和感を覚えると「あ、ヤバイかも」と焦ってしまうことがあります。酔いを抑えるための行動よりも、「酔いが強まってないか」の確認にばかり気持ちがいってしまい、結果どんどん酔いが進んでしまう。この感覚に近い印象を持ちました。

また、先述した「ドキドキする」などパニック発作が始まるきっかけとなる、ささいな身体的な変化について、以下のように説明しています。

危険な状況にあると感じられたときにはだれにでも起こる正常な反応で、自律神経の働きが深く関与する自律神経症状ととらえられます。

では、パニック発作が起こる人と起こらない人の違いはなんなのでしょうか。

パニック症の人の脳は、さまざまなセンサーが鋭敏です。危険を察知する能力が非常に高いのです。そのこと自体は異常ではありません。(中略)
しかし、脳の感度が良すぎると、客観的にみれば危険のない、むしろ安全なところでも、わずかな変化を拾い上げアラームを発するため、不安や恐怖が高まりやすい、自律神経系の反応が出やすくなるなど、過剰な反応が生じやすくなります。

このようにパニック症、パニック発作のメカニズムを掘り下げていくことで、どう対処したらいいのか、治療にはどのような方法を用いるべきなのか、その輪郭をくっきりと浮かび上がらせてくれるのが本書です。

パニック症の人とどう接するか?

周囲にパニック症の人がいる場合、どう接するのが良いかについても解説。鬱などにも通じる部分がありますが、「甘えではないか?」「しっかりしなさい」といった態度は厳禁です。一方で、過度に世話を焼くことも本人の治療意欲をそぐことになるので避けるべきとの記載も。
また、発作が起きた際の対処方法についての具体的な記述もあるので、友人や家族だけでなく、公共の場で見知らぬ誰かが発作を起こしている際の助けになることでしょう。

本書には、パニック症の基本的な知識から発生の仕組み、そして具体的かつ実践的な治療法、さらにはパニック症を抱える人への生活のヒントも記載されており、パニック症への理解を深めることができます。冒頭でも記載した通り、一度パニック発作(のようなもの)を体験した私にとっては、思い当たる部分もあってとてもためになる内容でした。

パニック症の方はもちろん、そうではない人にとっても、病気への備え、そしてパニック症に悩んでいる人に寄り添うためのガイドとしても役に立つ本だと思います。

レビュアー

ほしのん イメージ
ほしのん

中央線沿線を愛する漫画・音楽・テレビ好きライター。主にロック系のライブレポートも執筆中。
X(旧twitter):@hoshino2009 

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