多くの人が年に一度は受けている健康診断。判定結果に一喜一憂するものの、その数値が意味することについては「?」な人も意外と多いのではないでしょうか。
かく言う私もそのひとり。本書では、健康診断における各項目について、臓器別・病気別に整理し解説。また、厚生労働省が公開している、特定健診(40歳~74歳の全国民に義務付けられた健康診断)の結果も参照し、健康診断の数値が他の人たちと比べてどれくらい良いのか、悪いのかがわかる仕組みになっています。
さっそく、私の健康診断結果と照らし合わせながら、いくつかの項目をチェックしてみましょう。
血圧
以前より気になっていたのが血圧です。私の場合、直近のデータは以下の通り。
収縮期(上)144
拡張期(下)88
なんとなく上が130を超えていると注意が必要という認識でいましたが、これまで私自身の数値は130以下だったので、安心していました。しかし昨年150、そして今年は144と高めの数値を記録。まずいとは思いつつも、この数値はどの程度悪いのかわからず。
そんなモヤモヤを、本書はクリアにしてくれます。
テレビCMなどでは、上が130を超えると大問題であるかのように煽っていますが、そんなことはありません。日本人間ドック学会の基準は、表6のとおりです。
昔は年齢+90~100が高血圧の基準だったそうですが、時代とともに下げられ、2009年には130に。しかし厳しすぎるという声を受け、今の水準になったそうです。
では実際に、他の人たちの血圧はどの程度なのでしょうか。本書に掲載の、令和2年度の東京都における「上の血圧」分布図と照らし合わせると、自分がどのレベルにいるのかが一目でわかります。
私は45~49歳で140以上160未満、ということになります。この世代の10%にあたるわけですが、それより上は約2%しかいないことを考えると、油断はできないですね……。
この一覧を見ると、年齢とともに血圧も上昇していることがよくわかります。本書では、全世代一律ではなく、加齢に伴う血圧上昇を踏まえた基準を設けるべきでは、という提言もしています。
HDL・LDLコレステロール
いわゆる善玉・悪玉と呼ばれるコレステロール。健康診断ではメジャーな項目のひとつです。実は私、数年前からこの悪玉コレステロールが220超過で、E判定連発でした。自覚症状もないので放置していましたが、ふとしたきっかけで医者に診てもらったところ、動脈硬化のリスクが高い、と診断され今は薬を服用しています。
この項目では、そんなコレステロールについて素人にもわかるよう、丁寧に解説。まず前提として、コレステロールは物質的に1種類で、HDL、LDLという区別はないそう。
コレステロールの大半は肝臓で作られます。できたコレステロールは、LDL (低比重リポタンパク質) 粒子に詰め込まれて、血液中に放出されます。そして全身の細胞にコレステロールを供給するのです。つまりLDL粒子は、コレステロールの運び屋ということです。
コレステロールの供給が過多になると、使いきれなくなって余りが生じます。余分なコレステロールは、LDL粒子から血液中に放出されて、遊離コレステロール、つまり裸のコレステロール分子となって、血液中を漂い始めます。ところがコレステロール分子は水に溶けにくいため、すぐに動脈の内璧にもぐり込もうとします。それが動脈硬化を引き起こすのです。(中略)
そこで登場するのがHDL(高比重リポタンパク質)粒子です。HDL粒子は、血液中に出てきた遊離コレステロールを内部に取り込み、コレステロールエステルという物質に変えて、肝臓に戻します。つまりHDL粒子は、余ったコレステロールを回収する役割を担っているのです。
このHDLとLDLのバランスが崩れると、動脈硬化リスクが高まるというわけです。表を見ていただければわかりますが、私のLDL220という数値は異常ラインを遥かに超えていました。
また、LDLコレステロール分布図を見ると、45~49歳で220は同世代で6%となり、当然ながら最上位ランク。大変よろしくないことをあらためて痛感しました。(ちなみに今は薬のおかげで120以下で推移しています)
健康診断を取り扱う本書では、様々な診断項目の解説に留まらず、前述したように数値基準などの提言や問題提起も行っていますが、決して堅苦しいものではありません。たとえば「大腸がん検診」の項目で便潜血検査に言及する場面ではこんな記述も。
採便は提出日の前日と当日がいいのですが、便秘で出にくいというひともいます。そういうひとは、出たときに取って、提出日まで「冷蔵庫で保存せよ」ということが書かれています。そんな勇気が試されるのも、大腸がん検診ならではの醍醐味です。
健康診断の各項目について、データと併せて予想されるリスクも含め詳細を解説。さらに数値基準の変遷、その歴史的背景なども交えて、時に柔らかい文章も入れ込みつつ紹介する本書。これを読むことで、具体的なイメージとともに、健康診断の数値が様々な病気リスクを表現しているのだと理解できました。
理解が深まると自然と面白くなるもの。つまり、本書は健康診断に対して、より興味を持って取り組み、その結果を踏まえて自身の体の現状を把握できるようになる、そんな一冊なのです。
レビュアー
中央線沿線を愛する漫画・音楽・テレビ好きライター。主にロック系のライブレポートも執筆中。
X(旧twitter):@hoshino2009