日本の「ものづくり」と聞くと、「凋落」というイメージが浮かぶ人にこそ、読んでほしい一冊ができました。深刻さを増す人手不足に、予算削減と、日本の科学技術をとりまくマイナス要素は尽きません。しかし、そんな逆風のなか、日本最大級の研究機関・産業技術総合研究所には、日々、創意工夫と斬新なアイディアで突破口をひらく研究者たちの姿がありました。
磁力で冷やす冷蔵庫に、300℃でもさわれる断熱レンガ、3億年に1秒しか狂わない光格子時計などは、実現すればいまの世界の常識すら変えることになるでしょう。ノートパソコン程度の頭脳でヒトのように動き、大工仕事をこなすロボットのデモ動画は、再生回数120万回を超えて大バズりしています。
本書で取り上げたのは新時代の発明であり、社会を面白くするような10の研究です。さらに、奮闘する研究者たちの言葉を読むと、日本の「ものづくり」の日はまた昇る予感がします。
──学芸第二出版部 森絵美
レビュアー
学芸第二出版部