日本の本格ミステリーを牽引し続ける島田さんが’80年代に発表した本作は、4つの短編で構成されています。
高級住宅が並ぶ成城の丘の上を観察する老人の驚きの目的。地下街に出没するピエロは何を狙っているのか。“アサリちゃん”なる仕事とは? 昭和から平成にかけての国内の雰囲気をたっぷり味わえます。
なかでも「乱歩の幻影」は、島田さん自身の体験から発想されたもので、江戸川乱歩の知られざる秘密に迫った、推理小説ファンなら、おさえておきたい作品です。この「乱歩の幻影」が、映像化されることになりました。
映画『乱歩の幻影』(2024年春公開予定、出演:結城モエ、高橋克典、常盤貴子、監督・プロデュース:秋山純)。島田さんは脚本も手掛けた上に、数年前からオペラを(!)創作されているので映画内の劇中音楽も担当されています。
周到なたくらみが収斂する原作に、新たに書かれた自著解説も是非!
──講談社文庫出版部 里村孝人
レビュアー
講談社文庫出版部