「未来」という言葉にどんなイメージを持っているでしょうか。「希望」のような明るいイメージもあれば、「不安」といったネガティブな一面を思い描く人もいるでしょう。両極端な要素を持つ「未来」とは一体何か? そんなシンプルだけど答えに詰まる疑問を、優しい物語で紐解いてくれる絵本『みらいってなんだろう』が2023年11月6日に発売されました。
物語を描くのは、『ツレがうつになりまして。』の著者・細川貂々(ほそかわてんてん)さん。前作『こころってなんだろう』に続く「なんだろうシリーズ」第2弾として刊行されました。
「みらい」とは取捨選択の繰り返し
物語は小学生のちぃちゃんのため息から始まります。ちぃちゃんは明日の遠足のことを考えると心配でたまりません。なぜならばバスに酔わないかな、森を最後まで歩き切れるかなと、明日という「みらい」に不安を感じているからでした。
私たちはその不安を、どうしたらうまくいくか?と考え、選択しながら日々を過ごしており、それこそが「みらい」だと教えてくれます。
そして、その選択肢は私たち自身の「かこ」という「きおくのひきだし」から出来ています。つまり「きおくのひきだし」から「みらい」を選んで私たちは生きているのです。
心を軽くしてくれる「生き方の指南書」
生きていくということは未来に進んでいくことであり、本書は言い換えれば「生き方の指南書」として読み進められます。
その中で細川貂々さんが声を大にして伝えてくれていることは、
・一人で抱え込まず周りを頼る
・過去を後悔する必要はない
ではないでしょうか。
「ひきだし」が少なくて選べないなら、周りの人たちの「ひきだし」を借りればいい。そして「ひきだし」は増え続けるものだから、今の自分とあの時の自分は比べられないのです。
大切なことは、そうやって私たちは「自分で」選んで一歩ずつ進んでいるということです。
人と話すことは相手に「ひきだし」を増やすこと
そして本書の後半でちぃちゃんが遠足の様子を両親に話すシーンがあります。話を聞くことで両親は自分たちの「ちぃちゃんのひきだし」を増やすことができるのです。
親子の会話は大切とよく言われますが、なぜ大切なのかが一目でわかる印象的なシーンでした。そして親子だけでなく、友人やパートナーとの良好な関係を築く際にも会話は大切ですよね。自分を知ってくれている人がいるということは、ひいては自分を守ることに繋がるのだなと考えさせられました。
本書を読んで腑(ふ)に落ちることが多いのは、私が「ひきだし」を増やしてきた大人だからであって、今だからわかるのだと思います。子どものときから知っていたらそれこそ「ひきだし」として、その時々で違う考え方を持てたかもしれません。もちろん、もしもをここで語ることはナンセンスですが、これからを生きる子どもたちの「ひきだし」になって欲しい一冊であることは間違いないです。
レビュアー
ライター。フリーランスで働く1児の母。特にマンガに関する記事を多く執筆。Instagramでは見やすさにこだわった画像でマンガを紹介。普段マンガを読まない人にも「コレ気になる!」を届けていきます!
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