今日のおすすめ

自分の心との付き合い方。子どもも大人も読んでおきたい、自分の気持ちを考える絵本

こころってなんだろう
(作・絵:細川 貂々)
2023.05.10
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自分の「こころ」について知る絵本

「人の気持ちを考えなさい」。そう言われて私たちは育ちます。「自分の気持ち」についてはどうでしょうか。大人にも「わけもなく悲しい」日や、「なぜか心が弾む」時があります。しかし「自分の気持ち」「心」について深く考える機会を持てた人はそう多くないのではないでしょうか。気持ちはどこから生まれるのか、心はどんな時に動くのか……。そんな「心の仕組み」を知っていますか?



「こころってなんだろう」は細川貂々さんによる絵本です。うつ病を患った夫の闘病を描いたコミックエッセイ『ツレがうつになりまして。』や水島広子医師との共著「それでいい。」シリーズなど、人の心に関する多くの著書を持つ細川さん。この絵本では「こころ」とはどんなものか、また自分の「こころ」とうまく付き合うにはどうすればいいのかを、かわいいマンガと直筆の書き文字でやさしく教えてくれます。自分の「こころ」を知ることは、とても安心できることだよ……。子どもにも、大人にも、そんなメッセージを伝えてくれる1冊です。

「ある」とは知っているけれど



目に見えず、カタチも持たず、温度や質感もない「こころ」。しかし、それが自分の中に「ある」ということは誰もが自覚できると思います。

では、こころはさいしょから
あなたにあったのかな?

細川さんはこう問いかけます。
心……最初から……? 大人も少し考えてしまう、こんな問いかけ。自分の心が生まれた瞬間を、思い出すことはできますか? 細川さんは「こころの生まれるプロセス」を、こんな風に解き明かしてくれます。

赤ちゃんの頃は何もわからないけれど、「コトバ」を覚えてだんだん自分のことを伝えられるようになり、自分にしかわからない秘密を持つようになります。そして……「わたしのこころ」が生まれる瞬間が来るのです。
この部分のイラストと、ページの割り振りがとても秀逸。ページをめくると、小さい頃のことは忘れてしまった大人の私も「確かにこうだった!」と、自分の「こころが生まれたとき」に、もう一度出会えたような感激がありました。

生まれた「こころ」は、人と関わるたびに動きます。そして生まれるのがいろんな「きもち」。しかし、「うれしい」「たのしい」「好き」こんな幸せなきもちより、「こわい」「ふあん」「どうしよう」「やだなー」……つらいきもちのバリエーションのほうが、どうやら多いようなのです。


しかし、「しあわせ」でも「つらい」でも、大切なのは自分が今どんな気持ちでいるかを知ることだと、細川さんは言います。なぜなら、私たちには、自分のきもちを他人に伝える「コトバ」があるから。

コトバは、気持ちを伝えあうことができます。「自分のこころ」「他人のこころ」が違うことを確かめられます。
「こころ」も「コトバ」も、「ある」ことが当たり前すぎて、それをじっくり見つめたり、その力について考えたことのない大人も多いはず。でも、この部分を読むと、すでに手の中にあるのに気づいていない自分の可能性に光を当ててくれるような優しさを感じます。
また、自分の気持ちにフタをしてしまう子、言葉で気持ちを伝えることが苦手な子、人に甘えるのが苦手な子もいるでしょう。そんな子どもに、細川さんはこう伝えてくれるのです。

とりあえず、
「たすけて」「ありがとう」「ごめんなさい」
これがいえれば だいじょうぶ 

こころはいつもくるくる動いてる

「こころ」は大切。しかし何かを迷っているときには「こころにまどわされない」ことも大切だと、この本は言います。

たとえばこんな風に、友達に謝りたい気持ちと、「許してもらえなかったらどうしよう」という気持ちの間で揺れ動き、行動をためらってしまうこともあります。でも……。

こころに まどわされないでね
だって こころは いつもくるくる動いてる

「こころ」はゆるぎないものではありません。天気や他人、大好きなペットといった「自分のそとがわのできごと」でも「おなかがすいた」「トイレに行きたい」などの「自分のうちがわのできごと」でも揺れ動くものです。

だから 自分がこうしたいって思ったことは
ゆうきを だしてやってみよう

心に振り回されず、自分の「こうしたい」の声に従うことで良い結果になったり、気持ちが晴れることもあるでしょう。そしてこうして「心は動くもの」と教えてもらえることで、悩んで揺れる自分も「アリ」なんだ、と思うことができます。

本書は可愛らしいイラストとわかりやすい言葉で、子ども一人でも読める絵本です。しかし、優しくシンプルな文章の中に「心ができる瞬間」「心を作っているもの」「気持ちが生まれるとき」「言葉の役割」「自分の心と他人の心は別のモノ」……こんな心に関する教えがギュッと詰まっています。特にラストの一文には、大人もきっとハッとさせられるはず。

子どもはもちろん、「最近心が固くなってしまっているかも」そう感じている大人にも、癒しをくれる1冊です。

  • 電子あり
『こころってなんだろう』書影
作・絵:細川 貂々

じぶんのきもちを知って、かんがえて、安心できるえほん。
「こころってどんなもの? めにみえる? あつい? つめたい? かたい? やわらかい?」
映画化もされた『ツレがうつになりまして。』や水島広子医師との共著「それでいい。」シリーズなど心をテーマに数多くのベストセラーを描いた、細川貂々氏による、「こころ」について学べるやさしい絵本が誕生。
何もわからなかった赤ちゃんから、コトバを覚えて子どもになって、「わたし」のこころがどんなふうにうまれるか、どんなことで変化するか、どうやってきもちをつたえるか、など、子どもも大人も繰り返し読んでおきたいこころとの付き合い方をかわいいマンガと直筆のやさしい書き文字でわかりやすく教えてくれます。
シリーズ化決定! 第2弾は『みらいってなんだろう』先のことがあれころ心配になる人も読めば安心できる。

レビュアー

中野亜希

ガジェットと犬と編み物が好きなライター。読書は旅だと思ってます。
twitter:@752019

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