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『幸福な食卓』『そして、バトンは渡された』に連なる心洗われる傑作
おや、今回は初のSF小説かな、と原稿を読み始めた瞬間に思いました。
人の心がエスパーのように読める大学生の梨木くんは、だれもが抱える何がしかのつらさにそっと寄り添ってくれるすごくいいやつです。
終盤、唯一心を閉ざしたままのバイト仲間、常盤さんの謎──重い秘密が明かされます。
今作も、読み口はライトながら、笑って読んでいるうちに遠く深くに連れていかれる瀬尾節炸裂で、心の汚れきったすれっからし編集者(私)もゲラを読むたびに泣いてしまいました。
瀬尾さんは不思議な人で、どんなに嫌な人を書こうとしてもいい人になってしまうそう。
今作では、いい味を出している「大竹さん」に注目です。
「初回限定」で同封する冊子「アフターデイ」は、その大竹さんの語りで登場人物の後日譚を綴って頂きました。
これも超絶面白く、ここに登場する新メンバーをまた書いてみたいとのことなので、文庫化の時に期待しています。
──小説現代編集チーム 奥村実穂
- 電子あり
私は、ぼくは、どうして生まれてきたんだろう?
大学生の梨木匠は平凡なことがずっと悩みだったが、中学3年のときに、エスパーのように人の心を読めるという特殊な能力に気づいた。
ところが、バイト先で出会った常盤さんは、匠に心を開いてくれない。
常盤さんは辛い秘密を抱えていたのだった。だれもが涙せずにはいられない、切なく暖かい物語。
レビュアー
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