「葉っぱ切り絵」という言葉を初めて聞いたとき、どういうモノなのか全く想像がつきませんでした。それは、私自身に葉っぱを使って切り絵を作るという発想自体がなかったから。
リト@葉っぱ切り絵さんの初作品集『いつでも君のそばにいる 小さなちいさな優しい世界』を目にしたときの驚きは忘れられません。
今作は『離れていても伝えたい』とタイトルにもあるように、切り絵の中からも添えられた言葉からも、温かさが伝わる "メッセージブック" となっています。
まず、この作品集を見て最初に感じたのは、1枚の切り絵の中から様々なストーリーが浮かび上がって来て、まるで絵本を読んでいるような気分になることでした。
※引っ越し
たとえ引っ越して離れ離れになっても、見えない友情で繋がっていることが、たくさんの言葉を並べるより、この1枚でわかります。
カードの裏には短いメッセージが書いてあり、会いに行くよ、手紙書くね、君をずっと忘れない、といったありきたりの言葉ではなく、これらをすべてひっくるめた「約束、ずっと覚えてるから!」でした。
どんな約束をしたのかな? と、また色々と想像してしまいます。
この作品集は、デザインもまた私にはない発想のものが数多くあります。
※ ポット
葉っぱの中心にある太い葉脈をポットから注がれるお湯に見立てるなんて考えもしなかった発想です。
この切り絵には、「疲れた時はいつでもおいで」というメッセージが添えられていて、押し付けではない大らかな愛を感じます。
きっと、このポットのお湯は途切れることなく注がれるだろうと、この続きも想像してしまいます。
また、和風なセンスが目を引く作品は、こちら。
※七夕
「きっとまた笑顔で会えますように」というメッセージが書かれたこの作品は、
七夕の出会いを描いています。天の川、竹、短冊、橋も動きのある線で描かれているせいか、このメッセージが柔らかく心に届きます。
リトさんが、葉っぱ切り絵アーティストとして制作をスタートさせたのは2020年。ご自身のADHDを前向きに生かすため、InstagramやTwitterに毎日のように投稿していたのですが、これらはすべて独学というから驚きです。
あまりの繊細さに、見惚れてしまったのはこちら。
※コーラス隊
マイクスタンド、ト音記号、音符など細部まで再現され、緩やかな曲線で描かれた五線紙からは、この曲が明るい歌だということが、そして「みんなが集まれば そこがコンサート会場」というメッセージからも温かさが伝わって来ます。
これらの作品は、すべて自然の中で撮られているので、とても開放的で見ているこちらも思わず笑顔になってしまいます。
この作品集に収録されている24枚の切り絵は、1ページずつ取り外すことができるので、葉書(定形外)として送ることもできるし、メッセージカードとして使うこともできます。
私は、書類などを送るときに添えていた一筆箋をやめて、このカードを付けようと思いました。これを受け取った人は、間違いなくほっこりとした笑顔になることでしょう。
心の奥までじんわりと温かくなる、リト@葉っぱ切り絵さんの世界をぜひ感じ取ってください。
レビュアー
「関口宏の東京フレンドパーク2」「王様のブランチ」など、バラエティ、ドキュメンタリー、情報番組など多数の番組に放送作家として携わり、ライターとしても雑誌等に執筆。今までにインタビューした有名人は1500人以上。また、京都造形芸術大学非常勤講師として「脚本制作」「ストーリー制作」を担当。東京都千代田区、豊島区、埼玉県志木市主催「小説講座」「コラム講座」講師。雑誌『公募ガイド』「超初心者向け小説講座」(通信教育)講師。現在も、九段生涯学習館で小説サークルを主宰。
公式HPはこちら⇒www.jplanet.jp