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愛人業って儲かるの? 『オンナの値段』まとめました。

オンナの値段
(著:鈴木 涼美)
2018.01.21
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私の「オンナの値段」はいくらなのか?

オトコのように「家族を養う」とか「オンナを幸せにする」とかいう世俗的な大義名分にはイマイチ巡り合っていない。家族を養ったりオトコを養ったりしているオンナはもちろんいるが、それが社会的に共有された価値観だとは私には思えないし、オンナが仕事をしてお金を稼ぐ根本的な理由だとも思わない。私たちは何のために働き、稼いだお金はどこへゆくのか。

Instagramなどで「何をやっているか分からないけれど謎のセレブ生活を送っている女性」を見かけて不思議に思ったことはないでしょうか。

バリバリ仕事しているようには見えないけれど、親がお金持ち? 彼氏が沢山いて貢がれてる……?

実際のところは「いいね!」を沢山押されるような華やかな生活に見せるために、愛人になってプレゼントを貢いでもらったり、AVや風俗でこっそりアルバイトをしたりする女性も多いと聞きます。

“人からすごいと思われるためだけ”に裏でわざわざそんなアルバイトをするなんて、男性から見ると全く理解できない感覚かもしれません。

でも、成功のロールモデルがある程度確立されている男性と違って、今の世の中を生きる女性たちは常に「女としての成功」の正解を探し続けてもがいています。昨年は「マウンティング」という言葉が流行りましたが、とても女同士の本質を表している行動だと感じるのです。

言ってしまえばオンナを養うわけでも子供を養うわけでもない。誰に楽させるわけでも家庭を維持するわけでもない私や多くの女の使うお金など、全部無駄遣いといえば無駄遣いだし、食うに困るわけでもなく世界を救うわけでもない私たちの仕事など、膨大な暇つぶしである。それでも私は稼がずにはいられないし、使わずにはいられない。なぜだろうか。

既に、結婚して子供を産んで家族のために尽くすのが正解……という女性のロールモデルは崩壊しました。ボス猿のように、たった1人の勝者になりたいわけではない。誰かに「大丈夫」と言って欲しい。自分がどうなりたいかすら見えないから、身近なところで人より上に立って安心したい。そんな心理が、女性のお金の遣い方には顕著にあらわれるような気がします。

「人から賞賛されたい、羨ましがられたい、認められたい」という気持ちを手っ取り早く満たせるのはやはり「お金」。

「オンナの値段」という直球なタイトルが付けられた本書は、“オンナとお金の謎の生態”について徹底的に掘り下げられた1冊です。

なかでも、AV、風俗、キャバクラ、ブルセラ、愛人業……といった大きな金額が動く環境にいる女性たちの実態に切り込んでいます。大学時代の水商売のアルバイトでアナウンサーの内定が取り消しになった事件があったように、一般的には一度でも経験してしまうと不利だとされる職業に就く女性たち。

男性からすると「自分が利用するのはいいけれど、彼女や娘には絶対就いて欲しくない仕事」だと考えている人が多いでしょう。では、その世界に飛び込む女性たちは何を考えているのでしょうか。そこにはお金の価値に対して男性から植え付けられた価値観が大きく影響しているように思います。

そして高度に複雑化された社会で、私たちにとってお金というのはとてもアンフェアなものである。お金を持っていないとお金を借りられないし、お金持ちはどんどんお金持ちになって貧乏人は這い上がれないし、美人はしょっちゅう奢ってもらえるうえにキャバクラの時給が高い。交際クラブもブルセラも風俗も、オンナによって顕著に値段が違う。わかりやすくフェアで統一された価値であると同時に、私たちの他人との差異を示してくれる不平等で正直な指標でもある。

女性は、小さい頃から「可愛い子」「可愛くない子」という2種類のオンナにくっきり分類されて男性から扱われて育ちます。「“美”が簡単にお金になるのであれば、それを換えない手はない」と女性が思ってしまうのは、男性の扱いがそうさせていると言えるのではないでしょうか。

女優、モデル、アイドルなどはかなりハードルが高いとしても、お金持ちの彼氏、既婚者の愛人など容姿がきっかけで働かなくても食べていける立場や、AV、風俗、水商売など外見で収入が大きく変わる職業など、"美"というのは女性が稼ぐ方法に直結させることができます。

美人であることを活かせば、それほど努力しなくても人より稼げる"才能"であり"道具"であることは間違いのない事実です。もちろん男性にだってアイドルはいるし、とことん稼いでいるホストもいます。美人なのに全く容姿と関係ない仕事に就いている人もいるでしょう。でも、これらの“美をウリにする市場”は圧倒的に女性に開かれています。

ただAVや風俗など「身バレ」の心配の付きまとう職業にお金のためだけに飛び込むには、やはり抵抗がある女性が圧倒的に多いはず。そこを飛び越えてでもその仕事に就く人、就かない人との違いとは? そして、普通の女性よりも大きな金額を稼いでも、買い物やギャンブル依存、ホストクラブに使ってしまうのはなぜなのでしょうか。

その答えが、本書には赤裸々に書かれています。

著名な学者を両親に持ち、慶応大学卒から東京大学大学院へ進学、日経記者という超エリート人生でありながらAV出演の過去を持つという異色の経歴を持った筆者は「自分もAV出演歴がある」というのがポイント。

よく言われることですが、女性は「共感」に弱い生き物です。全く関係ない業界の女性が取材して書いたら「上から目線」と言われそうなセンシティブな裏側にまで徹底的に切り込めているのは自らが経験者だからこそではないかと感じました。

お金で買えない幸せもあるけれど、お金で買える幸せもまた沢山ある。同じ女として自分の“オンナの値段”について徹底的に考えさせられた1冊でした。実際にご自分の目で“オンナとお金”の深~い裏側、こっそり覗いてみませんか?

  • 電子あり
『オンナの値段』書影
著:鈴木 涼美

わたしたちはお金を愛し、お金と喧嘩し、お金に絶望しながら、お金を求めてきた。

かつて「文春砲」の餌食になった元日本経済新聞記者にして、元AV女優(東京大学大学院及び慶應義塾大学SFC卒)の気鋭の文筆家、鈴木涼美。実は彼女、学生時代からキャバクラ嬢や銀座のクラブホステスのアルバイトをしていて、いわゆる「夜職」の人脈が半端なく広い。
そんな彼女が、夜のオンナたちの桁外れな、ときに地に足のついた「お金の稼ぎ方&使い方」について根掘り葉掘り聞き出し、なぜ彼女たちは、そんな風にお金を稼ぎ、使うのか、その深層心理を探った。
欲しいものがあるから稼ぐのをやめられないのか? 
稼ぐのがやめられないから欲しいものを探してるのか? 
彼女たちを突き動かすものの正体は? 

・4年間で8000万稼ぎ、すべて使い切った女子大生風俗嬢。
・ホストクラブで一晩で1600万使ったキャバ嬢のプライド。
・母乳風俗で月80万を稼ぎ、子どもを育てるシングルママ。
・2軒掛け持ちの高級ソープ嬢として、まったくお金に困っていないのに、さらに空いた時間にデリヘル勤務するワーカーホリック。

などなど、お金と幸せと若さを持て余して迷走しまくっている、愛すべきオンナたち総勢30名以上が登場。私たちの人生と切っても切り離せない「お金」について、今一度考えさせられる「オンナの現代資本主義論」!

レビュアー

上岡史奈 イメージ
上岡史奈

20代のころは探偵業と飲食業に従事し、男女問題を見続けてきました。現在は女性向け媒体を中心に恋愛コラム、男性向け媒体では車のコラム、ワインの話などを書いています。ソムリエ資格持ちでお酒全般大好きなのですが、花粉症に備えて減酒&白砂糖抜き生活実践中

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