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【名作発見】寺から派遣されてきた「居候のクソ坊主」が生臭すぎる件
(著:武田 麟太郎 解説:川西 政明)
このあと主人公は上京し、社会主義活動へと身を投じ、仲間と共にビラをまいたり、金持ちから金をゆすったりするのですが、故郷のこの坊さんに対して恨みがなさそうなのが不思議でした。フィクションかもしれませんが、「社会」の「階級」闘争には怒り、反抗するのはイケてても、「個人」の「家」の問題について奔走することはいわゆる「ダサい」とされてたような風潮がこのころはあったような気もします。(カラスヤ)
後年は風俗小説「銀座八丁」を書いたプロレタリア作家の初期権力との格闘を示す伏字××のある小説「暴力」収録。その後、浅草のアパートを舞台に庶民男女の哀歓を活写した「日本三文オペラ」や「市井事」「一の酉」「井原西鶴」と、「川端康成小論」「西鶴町人物雑感」「好色の戒め」等の評論を併録。強靱な散文精神で戦前戦中の激動時代を疾駆した作家武田麟太郎の精髄を1冊に凝縮。
レビュアー
1973年生まれ。漫画家。著作に『カラスヤサトシ』『カラスヤサトシのおしゃれ歌留多』『強風記』『喪男の社会学入門』『毎日カラスヤサトシ』『オレは子を見て育とうと思う』『カラスヤサトシの世界スパイス紀行』『おとろし』『カラスヤサトシの孫子まるわかり』『カラスヤサトシの戦国散歩』など多数。近刊にこの連載「文庫で100年散歩」を収録した『カラスヤサトシの日本文学紀行』があります。
近況:飛鳥山の博物館、記念館をコンプリートしてきました。
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