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「がんばらない」けど、「怠惰でもない」人になろう。
シンプルかつインパクトのあるタイトルなので誤解を招きそうですが、本書は、がんばることをやめて怠惰に生きなさい、と推奨しているわけではありません。
全9章からなる本書の意図を簡潔にまとめると、がんばりすぎてしまうことへの警告であり、がんばりすぎて疲れてしまった人への癒やしです。
第1章では、こんなことが書かれています。
──がんばりすぎている人というのは、精神的にも肉体的にもいつもいっぱいいっぱいの状態です。
本人とすれば、「私はもっともっとがんばれる」という気持ちでいるかもしれませんが、実際はそうではないようです──
──人間は、強そうに見えて、意外ともろい部分もあるのです。
限界なく、どこまでもがんばっていける存在ではありません。
人には誰でも限界があるのです。
そして、その限界を超えれば、精神的にも肉体的にも様々な支障が生じてきます──
がんばりすぎている人というのは、えてして自分の限界に気づけないものですし、気づいたときには心身ともに疲弊し、最悪、抜け殻になっている。
経験がある人はわかると思いますが、抜け殻でいることは、とても苦しい。抜け殻なのに、心は空っぽではないから。辛い気持ちや悲しい気持ち、やるせなさ、結果を出せなかった自分への憤りが、精神力だけでなく体力も削り取ってゆくのです。
本書でも、それに近い「燃え尽き症候群(バーンアウト)」について、こう警告しています。
──会社に入社したばかりの新入社員が、高い理想と大きな願望を持ち、自分に与えられた仕事に対して情熱を持って全力投球します。
しかし、三ヵ月がたち半年が過ぎる頃になって、だんだんと「いくら努力しても、思い通りの結果が得られない」という事態に突き当たります。
たとえば、取引先の期待に応えようと一生懸命になってがんばっていても、自分の仕事について取引先からなかなか満足を得られません。
それどころかクレームばかりつけられるのです──
──そして、最後には、まったくやる気のない人間になってしまうのです。
これが「燃え尽き症候群」です。
情熱があるあまりに燃え尽きてしまって、がんばる意欲を失って、精神的に燃えカスのような状態になってしまうのです──
著者の植西聰(うえにし・あきら)さんは、そうならないためにも、「80パーセント主義」を心がけよ、と言っています。
──「やってやるぞ」という情熱は持ちつつも、心にゆとりを持って、がんばっていくことです。
また、100パーセントでなくても、80パーセントの成果が出たら、それに満足するように心がけていくことが大切です──と。
忌憚のない意見を述べます。僕はこの「80パーセント主義」を受容できません。僕の場合は、そんなふうには生きられないから。80パーセントでは満足できないんです。
しかし不思議なことに、著者のこの言葉によって、心がずいぶん楽になりました。
実は少し前に、個人的にとても辛い出来事があったのです。バーンアウトに等しい状態だったのですが、本書の存在がそこから立ち上がる手助けになった。
僕は、この本に書かれていることのすべてに共感したわけではありません。自分の考えとは大きく異なる箇所も多かった。しかしながら、思想的に共感できるかどうかは、癒やしとは無関係です。
本書は生き方の指南本ですが、個人的にはそれとは別の効能の方が大きかったわけです。
無理をしなくていい。80パーセントでいい。僕の人生観にはない言葉。でも、著者のそうした優しい言葉が、またがんばろうという気持ちにさせてくれました。
またがんばるために、一時的にがんばらない。それが、長期的には大きな力になるだろう。そう信じさせてくれるこの本を必要としている人は、きっと世の中にたくさんいます。だからこそ、おすすめします。
仕事、子育て、家庭、人間関係、夢の実現など、がんばっているのに、なぜかうまくいかない。それどころか、がんばればがんばるほど、結果は悪い方向に。それは「がんばりすぎ」ているから。「がんばらない」と心に決めた時、人生観が変わります。気持ちが晴れ渡って前向きになり、すべてがうまくいくようになります。まずは、肩の力を抜いてリラックス。自分らしく幸せに生きるための“楽しく、心地よく”がんばる秘訣が満載!
レビュアー
![赤星秀一 イメージ](content/images/writer profile/akahoshi.png)
1983年夏生まれ。小説家志望。レビュアー。ブログでもときどき書評など書いています。現在、文筆の活動範囲を広げようかと思案中。テレビ観戦がメインですが、サッカーが好き。愛するクラブはマンチェスター・ユナイテッド。
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