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自分を客観的に「配置」する本。隠れた能力や性質を俯瞰で発見!
(著:ミカエル・クロゲラス/ローマン・チャペラー/フィリップ・アーンハート 訳:月沢李歌子)
フレームワークとは経営戦略や業務改善、問題解決などに役立つ分析ツールや思考の枠組みのことをいいます。
この本では「自分をレベルアップする」「自分をもっと知る」「世の中の仕組みをさらに理解する」「周囲の人々をそだてる」という4つのカテゴリーにわけられた50のフレームワークが紹介されています。シンプル、実用的、わかりやすい、体系的、メソッドという基準で選ばれたこの50には、アイゼンハワー・マトリックス、SWOT分析、BCGボックスのようにビジネス上で著名なものはもちろん含まれていますが、それだけでなく「正しく決断するための、あるいは自分の人生や性格を改善する」ための訓練法としてのフレームワークが取り上げられています。
「クロスロード・モデル」では「人生の岐路でどの道を選ぶか」という問いに取り組んでいます。
1.「現在の自分」を分析しよう。
○いまの自分を作ったものは?
○なにが大切?
○誰の意見に従う?
○できないのはなぜ?
○なにが怖い?
2.未来について考えよう。
○手招きしている道。
○夢の道。
○良識の道。
○歩いたことがない道。
○すでに歩いた道。
○かつて安心できた場所へ戻る道。
これらの項目について考えてみることで自分の未来へ向けた決断を探ろうというものです。既知の条件と未知(=希望と不安)の条件をシンプルに浮き彫りさせて、自分の決断を促そうとしているのがわかります。
「幸せを感じるのはどんなとき?」と題された「フロー・モデル」では、“取り組んでいること”を縦軸に、“能力”を横軸に置いて、次のような項目を立てます。
○自分が選んだ行動。
○簡単すぎず、かつ、難しすぎない行動。
○はっきりした目的がある行動。
○すぐに結果が分かる行動。
自分の行動を配置することで現在の自分がわかります。ちなみに、縦軸・横軸の極限に置かれている指標はこうなります。「バーンアウト(燃え尽き)」「退屈」「アパシー(無関心)」「フロー(幸福感)」です。どの要素でその状態になるかは本を見てぜひ確かめてください。自分行動が自分の意図や意欲にもかかわらず桎梏(しっこく)になることがあるのが、一目でわかります。
“一目でわかる”というのがこの「フレームワーク思考法」の最大の良さだと思います。“わかりにくい(勘違い、誤解しがちな)自分”というものを一目で、白日の下に明らかにしてくれます。
自分を知る・つかむには、このほかにも「落とし穴に注意 パーソナル・ポテンシャル・トラップ」「恋愛にも応用できる ハイプ・サイクル」なども参考になります。
「フレームワーク思考法」は社会分析でも有効です。「ライフスタイルを分類する ミリュー・モデルとブルデュー・モデル」では商品分析から始まった「ミリュー・モデル」を社会環境の分析に応用し、さらには「ブルデュー・モデル」では文化資本・経済資本という評価軸の中でさまざまな仕事や商品・サービスが分類されています。私たちが生きている環境がどのような要素によって構成されているのか、つかみやすくなります。きわめてスリリングな「ブルデュー・モデル」で自分の位置、目標を定めてみるというのも「自分を知る」ことの一助になると思います。
“つかみやすくなる、わかりやすくなる”フレームワーク思考法はこれからも重要なものになると思います。なぜなら著者たちが記しているように、
──ますます理解しづらく、複雑になっていく世界において、絵や図表を使って考えるビジュアル・シンキングの手法は、大切なものに注力し、自分が見たものを信じる助けとなってくれるからだ。医者は、たとえ最新のツールを使えるにしても、いまでも聴診や問診というもっとも基本的なモデルを頼りにする。──
この本は“読むより、自分でやってみる本”だと思います。今の自分に最も必要な「フレームワーク・モデル」を見つけ、ペンを片手に記述してみること。その一文字ごとに、自分を発見し、社会をつかみ、自分の環境を知り、未来の道へ導いてくれるのではないかと思います。小さな本ですが実に強力な武器です。
レビュアー
編集者とデザイナーによる書籍レビュー・ユニット。
note
https://note.mu/nonakayukihiro
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