性格とはやっかいなもので、欠点がわかったり直したいと思っていてもなかなか自分では思うようにはいきません。また、なぜあの人はあんなことをするのだろうかと、自分の周りの人の振るまいや考え方に一喜一憂することもよくあることだと思います。この本は自分の性格に悩みを持ったり、周囲との付き合い方に悩んでいる人に大きな助けになるものではないかと思います。
ディグラム診断とはなにかというと、「データと心理学を使って、人の心の状態を可視化する診断」ということだそうです。心理学の要素にデータ(アンケート調査等の)を加味することで「より具体的な指針」を出せるように考案したものです。
ディグラムは20の質問に答えるだけで自分の性格を可視化(グラフ化)して診断します。心理学の指標としてはエゴグラム同様に5つの指標が使われています。それぞれの特性はというと、
・CP(Critical Parent、厳しい親)=「厳しさ」の指標:人の話をきかない、自分の価値観を譲らない、責任感が強い、プライドが高い、こだわりが強い。
・NP(Nurturing Parent、優しい親)=「優しさ」の指標:世話好き、感受性が強い、涙もろい。
・A(Adult、大人)=論理性の指標:合理的、計画性がある、理屈っぽい、計算高い。
・FC(Free Child、奔放な子ども)=「自由奔放さ」の指標:陽気、ユーモアがある、ノリがいい、わがまま、自己中心的、誘惑に弱い、飽きっぽい。
・AC(Adapted Child、従順な子ども)=「協調性」の指標:空気を読もうとする、忍耐強い、集団主義、自己主張が苦手、自分をうまく表現できない。
これらの5つの要素をどのように持っているかを27種類の「波形」で分類します。こうして自分の性格(傾向)が可視化されますが、ここまでが前段階です。このディグラムの本領はここから先にあります。
可視化した「その人の現在の性格パターン」から、それぞれの性格ごとの特有の悩みを見つけ性格に合った対応策をとることができるようになります。どのようにすればよいか……、たとえばCPを上げたい人は「自己管理能力」を上げればいいわけで、具体的には「毎日簡単でもいいから5分間掃除をする」、「食材を買うときは、産地を確認してから買う」。CPを下げたい人は「ダラダラする日を作る」、「自炊をサボって外食する」など具体的なサジェスチョンが記されています。他の4指標についてもどうような実践改良法があげられています。もちろん、他の指標との関連性にもふれられています。(このあたりの詳細はこの本で確かめてください)
ここで大事なのは自分をどのようにしたいのかという目標・目的を持てるかということになります。それが自分が弱点と思う要素克服の指針になります。
ここからは応用問題です。性格には相性というものもあります。とはいっても苦手意識を持って相手を避けているだけではなにも進展しません。相手の性格と自分性格を知って摩擦をさけることを考えるべきではないでしょうか。そのために木原さんの体験から割り出したシチュエーション別のディグラム活用法がのっています。職場の人間関係、仕事、恋愛等でのケーススタディです。ユーモラスな部分もあって、笑いながらも自分の悩みを解消する方法が見つかるのではないでしょうか。このケーススタディが、もう一つのこの本の優れた箇所だと思います。
──日常の習慣を変えること、あるいは環境や状況を変えること、そして、一緒に行動する人を変えること、それらによって、性格はみなさんが思う以上に簡単に変わってしまうものなのです。──
性格は変えられるのだろうかという疑問に木原さんが答えた一文です。性格のどの部分が可塑的なものなのかは簡単には言えないと思いますが、意志的な行動は変えることができます。そこから少しずつ試みてみるのがいいように思います。今の自分とらわれずに理想の自分像を手放さず歩むことが肝心なのだと思います。まず己を知ること、それもできるだけ客観的に知ること、自分の抱えてる悩みがどのようなものなのか、どのように解決すればいいのか、大きなヒントをこの診断から得られるような気がします。まずはこの本の冒頭のテストから始めましょう。
レビュアー
編集者とデザイナーによる書籍レビュー・ユニット。
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