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人生も仕事も、シンプルで真摯が基本。暮らしの再評価tips!

2016.04.04
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著者の松浦氏は、都内で自身の書店「COWBOOKS」を運営しながら、現在はレシピサービスとして有名なクックパッド社のメディア「くらしのきほん」の主宰者である。

前職の「暮しの手帖」編集長や、エッセイストとしてご存じの方も多いかも知れない。

さて、本書の内容は書名の通り、松浦氏が25歳なら、こんな50のやりたいことがある、というエッセイなのだが、文は自然体で、シンプル。それでいて小気味良い。

自身の生き方・経験から紡ぎ出されている言葉のため、地に足の着いた説得力がある。読後に何となく安心してしまうような感覚になる。表現しづらいが、あえて形容すると、そう、良き先輩による、後輩へのエールなのだ。

現代は、先を見通すことが難しく不確実に満ちた時代であると思う。巷に氾濫する言葉も、単に批判しているだけのものや不安を煽るだけの言説が非常に多い。反して、松浦氏の言葉には、基本を大切にすることや身の回りの物の再評価などが多い。例えば以下のような下りだ。

――たとえばカレーライスをつくるとします。ルウを買うと箱につくりかたが書いてありますが、あのとおりにつくれば、実は非常においしいカレーライスをつくることができることを、みなさんはご存じですか。僕は箱のつくりかたどおりにつくって食べたカレーライスが、あまりにおいしくて、感動したのを今でも覚えています。そして、基本に忠実であることの偉大さを自分の舌をもって知ったのです。――

正直言うと、この部分を読んで、今度カレーを作る時はそうしてみようかな、と思ってしまった。本書は、こうした著者が大事にしている事柄50項目について書かれているが、違和感のあるものは皆無だった。むしろ、そのいくつもの項目で筆者が普段心がけているものがあり、はたと膝を打った。文は人を表すとは良く言うが、松浦氏の人柄を表わしているのだろうと推測する(筆者は松浦氏とは面識はない)。

今回の読了をきかっけに、「くらしのきほん」のWebサイトを覗いてみて、合点がいった。印象としては、糸井重里さんの会社が運営している「ほぼ日」に似ている。

つまり、余計な装飾を排して、必要な画像と文字が並んだ、見やすさ・読みやすさを重視したテイストであり、そして何よりも、料理をすることに対する温かさが伝わってくるのだ。

生き方や考え方をそのまま言葉にして、伝えたいことを伝えることに成功している人は実は多くない、と思う。特に「いかにシンプルに伝えたいことを伝えるか」という点で、参考にすべき人は多いだろう。

その意味で本書は、20代の方はもちろんとして、それ以外にも、Webデザイナー、Webマーケティング業務に携わっているビジネスパーソンや、出版社をはじめとするメディア企業に勤務している社会人におススメの一冊である。

レビュアー

望月 晋作 イメージ
望月 晋作

30代。某インターネット企業に勤務。年間、150冊ほどを読破。

特に、歴史、経済、哲学、宗教、ノンフィクションジャンルが好物。その中でも特に、裏社会、投資、インテリジェンス関連は大好物。

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