本書は、中学生から50歳のやり手課長までが登場、さまざまな「恋愛」が描かれる短篇集ですが、日頃恋愛小説には興味がないという方にも、ぜひ読んでいただきたいのです。
描かれるのはたとえば、ひそかにつきあっていた相手の社内の評判、「歳の差婚」の波紋、好きでない彼をキープしておきたい気持ち……。自分の/他人の/人間関係の「ああ、できれば向き合いたくなかった!」といううっすらした闇が解像度高く言語化されていく、そんな快感と怖さを味わっていただけたらと思うからです。
高瀬さんの芥川賞受賞作『おいしいごはんが食べられますように』は、発売後2年半を経てもSNSでの感想が途切れないというロングセラー。本書にも同じような魅力があるのでは、と感じています。心にモヤモヤが広がり、小さなゾワゾワが止まらない「モヤゾワ小説集」、ぜひご一読ください。
──文芸第一単行本編集チーム K.H.
レビュアー
文芸第一単行本編集チーム