第1詩集で中原中也賞を、初の小説集『ここはとても速い川』で野間文芸新人賞を、2作目となる『この世の喜びよ』で芥川賞を受賞――。多方面で才能を発揮する気鋭の作家・井戸川射子さんの待望の芥川賞受賞後第1作がついに刊行になりました!
本作は「群像」に掲載された5編をまとめた短編集。早朝のバス、公園にある野鳥園、修学旅行先の五島列島、バイト先の工場の作業部屋などを舞台に、人の心の内に触れることで、「他人」という存在が繫がりたい「他者」に変容する瞬間を巧みに切り取っています。
井戸川さんの作品は、詩的かつ叙情的な文章の隙間から、「語られないもの」たちの存在があふれ出してくるのが魅力ですが、本作でもそれを存分に堪能することができます。
まだ井戸川さんの作品を読んだことがない方でも大丈夫! 入門編としても最適な、井戸川ワールドに耽溺できる作品集、ぜひご一読ください!
──文芸第一単行本編集チーム 中谷洋基
レビュアー
文芸第一単行本編集チーム