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「カフネ」とはポルトガル語で、「愛する人の髪にそっと指を通す仕草のこと」。著者の阿部暁子さんは、『翻訳できない世界のことば』という本にあったこの言葉の持つ意味から本作を着想されました。主な登場人物は、溺愛していた弟が急死してしまった法務局に勤める野宮薫子と、その弟の元恋人であった小野寺せつな。遺言書がきっかけで再会し、家事代行サービスで様々な人々の生活を手伝うことで、お互いを理解していく二人の関係性を描いた物語です。
注目は幾つも登場する料理の描写力。調理工程が丁寧に書かれ、読みながら思わずお腹が空いてくるほど。作品全体を通じては、ご飯を食べること、身の回りが片付いていることに加え、苦しい、辛いときこそ人に頼ることがいかに大切か、ということに改めて気付かされます。読了後「カフネ」の意味を感じ取ってくださったら編集者冥利につきます。ぜひごー読ください!
──小説現代編集チーム 山下直人
- 電子あり
法務局に勤める野宮薫子は、溺愛していた弟が急死して悲嘆にくれていた。弟が遺した遺言書から弟の元恋人・小野寺せつなに会い、やがて彼女が勤める家事代行サービス会社「カフネ」の活動を手伝うことに。弟を亡くした薫子と弟の元恋人せつな。食べることを通じて、二人の距離は次第に縮まっていく。
レビュアー
小説現代編集チーム
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