料理研究家としてだけでなく、洗練された暮らしのスタイルにもファンが増え続けている有元葉子さんに、年齢を重ねるごとに、魅力的なひとになるために、いまやっていること、続けていることを伺いました。未来の自分を素敵にする「毎日の習慣」とは?
料理研究家。3人の娘を育てた専業主婦時代から料理上手なことで有名で、雑誌に登場したのがきっかけで料理研究家に。素材を活かしたシンプルでおいしい料理はもちろん、洗練された暮らしぶりにファンが多い。メーカーと共同開発するキッチン用品「ラバーゼ」のシリーズでは使いやすさと美しさを追求。東京・田園調布にある「shop281」では、自身がセレクトした暮らしの道具や雑貨などを紹介している。豊かな感性で、フットワーク軽く、人生をあざやかに楽しむ生き方は多くの女性の憧れ。
有元さんが考える「習慣」とは?
毎日の小さなことの積み重ねで、1年後、5年後、10年後、20年後の自分ができていきます。といっても、5年後にこうなっていたい、なんていう人生設計は立てたこともないし、信じていません。
それよりも、家の片づけ、ぬか漬け、炭火起こし、ひとり旅、語学、台所道具作りなどの仕事……。最初はうまくいかなくても、「そのうちなんとかなるでしょ」という気持ちであきらめずに続けてきたことはたくさんあって、そういう毎日の“こつこつ”で、今ようやく「なんとかなっている」という感じでしょうか。私にとっては、それが自分らしい「習慣」なのかも。
今日食べているものが、今日考えていることが、今日やったことが、確実に未来の自分につながっていると思います。
どうやって「自分らしい習慣」を身につけていますか?
私の中では2つのパターンがあって、「きっかけがあって始めて、必要だからずっと続けていく」ことと、「何気なくやっていたことがいつのまにか習慣になっている」ということです。
例えば、お客様がわが家へ来られた時によく驚かれるのが「常に、裸足でどうぞ、と言えるベランダにしていること」です。これは今の家に来て、初めてベランダという空間を持ったのがきっかけでずっと続けている、毎日の拭き掃除習慣です。
ベランダの拭き掃除が習慣!?
住まいの掃除は基本的に「掃除の時間」をわざわざ作らず、埃が目についたりして「やらなきゃ」と思った時にこまめにしているのですが、ベランダだけは毎日3分の拭き掃除を習慣にしています。
ベランダを上手に使いたいと思ったら、まず拭くことです。拭けば、そのまま裸足で外に出られるのです。ベランダの床面積と高さを掛け合わせてみると、結構大きな空間です。たった3分の拭き掃除をしているだけで、そこが気持ちよく過ごせる場所になる。それだけで、毎日の暮らしに新しい風が吹き込むのです。
他にも新たに習慣になっていることはありますか?
一言で「習慣」といっても、毎日していること、ときどき必ずしていること、毎年していることなど、頻度もそれぞれです。挙げていくとキリがないのですが、例えばここ1年ほどは、「朝のストレッチ」や「ヨガ」などの運動を続けています。
私はずっと前から、食を通して生き方を見つめてきたのですが、年齢を重ねてきて最近気づいたのは「食べるということだけでは、足りないんだな」ということ。そこで考えたのが運動です。
運動を続けて、何か変わったことは?
実は、かなり前から、自分には運動が足りないな、とわかっていました。わかっていたのに、何かと理由をつけてやっていなかった。そこで一念発起で始めてみたら、自分よりずっと若いプロフェッショナルの人から教えてもらうって、こんなに楽しいんだということにも気づいて、今は1年ほど続いています。
運動をするようになって、やっと自分の体を見るようになりました。いままでは胃袋ばかり見てきたのですが、筋肉や骨も含め、すべてを合わせて「自分の体」なんだな、と最近実感しています。
食べることは、とても大切なこと。でも、すべてではないんです。食べることも、動くことも、両方が大切です。これからも続けたいことの1つです。
今回、『毎日すること。ときどきすること。』を刊行されましたが、なかでも変わった習慣はありますか?
新著には、そういった自分の「やっている習慣」ばかりを書きました。でも、もちろん逆もあるのです。まず、「やめたこと」。私が何かをやめるのは、納得できないときです。それをすることで気持ちよくいられなかったり、受け入れられない何かがあるときはやめどきで、「やめる」という選択も時には必要です。仕事でもどんなことでも。人づきあいをやめることが一番難しいですが、しなくてはならないときもあります。
確かに「やめる」こともなかなかできないことですね。
それから「やらない習慣」もあります。「先の心配をすること」と「人の評価を気にすること」はしません。先のことは考えても思ったようにならないし、他人がどう思うかで自分の生き方を変えることはできない──それだけは、もうわかっているのですから。
自分の「今」を精一杯に。ありきたりなようですが、本当にそれしかないと思います。精一杯やっている「今」こそが、10年後の私になって現れるのだと思います。