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「わたしのもの」とはなんだろうか? 著者30年の思索の結晶!
朝日新聞の1面を飾る「折々のことば」。その筆者である哲学者の鷲田清一さんの最大の関心事こそ「所有」という問題でした。
「ほかならぬこのわたし」がその身体を労して獲得したものであれば「それはわたしのもの」なのだ。言ってしまえばこれが近代西欧の思惟の根幹をなす論理。まことにもっともな話に思われもするのですが、はたしてそうか?
ロック、ルソー、カント、ヘーゲル、レヴィナス……。所有をめぐる多くの先人の議論の意義を鷲田さんは丁寧にたどりつつ、そこにある飛躍と陥穽を衝き、さらに考えを深めてゆきます。
21世紀の今日、ひとは独りで生きているわけではないし、自然環境などはそもそも万人のものではないかという認識がひろがるなかで、所有、あるいは主体、存在の自明性も揺らいでいます。本書は著者の30年にわたる思索の結晶。実に重厚な本であり、多くの人が手にすることを心から願います。
──学芸第一出版部 横山建城
- 電子あり
「ほかならぬこのわたし」がその身体を労して獲得したものなのだから「これはわたしのものだ」。まことにもっともな話に思われる。しかし、そこには眼には見えない飛躍があるのではないか……? ロックほか西欧近代の哲学者らによる《所有》の基礎づけの試みから始め、譲渡の可能性が譲渡不可能なものを生みだすというヘーゲルのアクロバティックな議論までを著者は綿密に検討する。
レビュアー
学芸第一出版部
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