5文字で星座をマスターしよう
空気が澄んだ冬は、夜空に浮かぶ星たちが目を楽しませてくれる時期です。夜空の暗さに目が慣れてくると浮かぶ星の連なり・星座たち。昔の人はこの連なりを人や動物に見立て、ひとつひとつに物語を添えていたなんてロマンチック……。柄にもなく、そんなことを考える季節でもあります。
しかし「星座っていくつあるの?」「いつ、誰が決めたの?」と考えると、わからないことも多いです。いつでも私たちの頭上にある身近な星座たちにまつわるこんな質問に、あなたは答えることができますか?
『5文字で星座と神話』は、そんな「星座」とそれにまつわる「神話」を5文字(!)で学べる一冊です。たとえば「おひつじ座」は「恩人を献上」、かに座は「何か踏んだ」と、思わず「どういうこと?」と興味をそそられてしまう5文字にギュッと要約されています。
著者のすとうけんたろうさんによる、かわいいネコちゃんが星座の世界のナビゲーターとなり、「星座って、なに?」というそもそもの疑問はもちろん、星座の「見やすい時期」をはじめとした基本情報や豆知識、神話を楽しく学べます。
一緒に空を見上げてみよう
この本では、星座を四季に分けて紹介しています。星空は、季節によってその表情を変えていきます。春には春の、夏には夏の夜空があるのです。
早速、「春の星座」を見てみましょう。
最初に紹介されるのは「かに座」です。
左上の日付はこの星座が見やすくなる時期です。3月下旬の午後8時ごろ、かに座は夜空の上のほうに現れます。
星座を構成する星々や、それにまつわる物語といった情報が見開きでまとめられています。物語の本文に記された数字は、文中に登場するほかの星座について触れられたページです。26ページにはヒドラとヘラクレスの戦いの顛末が書かれており、合わせて読むことで、さらに星座の物語を深く知ることができます。
さて、カニが星座になったいきさつとは……?
カニは友だちを助けるため、勇気を出してヘラクレスの足をはさんだ。しかし大きいだけのただのカニは、あっさりふまれて死んでしまった。そのようすを見ていてかわいそうに思った女神ヘラは、カニを空に上げて星座にした。
この物語を5文字で表すとこうなります。
何か踏んだ
なんて端的、そして容赦ないまとめ方……。
ヒドラとカニは仲良く暮らしていましたが、ヘラクレスの前ではカニは無力でした。ヘラクレス目線では「カニ」ではなく「よくわからないもの」を踏んだという認識なのかもしれません。哀れです。しかしその哀れさゆえに、カニは星座になれたのです。かわいそうだけど、この物語はやはりこの要約になるのかな……と感じました。
物語のキーと思う部分は人それぞれですが、自分なりの要約をしてみるのも楽しいでしょう。
今まで白い点線で結ばれた星々が星座なのだと思っていましたが、コラム「星座って、なに?」で、正しい知識に触れることができました。
現在の天文学において星座とは、中の星々ではなく境界線で囲まれた領域のことを指すのだそう。
季節ごとに違う姿を見せる星空ですが、それぞれの配置はほぼ変わりません。
星々が天球という無限に大きな球の内側にはりついていて、天球ごと回転していると考えれば説明がつく。この場合、星座は天球上につくられた区画と考えることができる。
天球を隙間なく埋める星座がどのように現在の形に落ち着いたのかも、コラム「星座の歴史」で知ることができますよ。
壮大な星の世界
楽しくゆるく、星座と神話の世界を教えてくれるこの本ですが、星の世界の壮大さを感じることもできます。
春の最初に出てきた星座はかに座でした。しかし、いわゆる12星座はおひつじ座から始まります。さらに現在、おひつじ座はクリスマス頃の夜空にその姿を現します。なぜ、12星座はおひつじ座から始まり、3月21日~4月20日前後に生まれた人たちの星座は「おひつじ座」なのでしょう?
大昔はここに春分点があった。つまり昔は、今でいう春分の日に太陽がおひつじ座に来ていたってこと。
そのため、伝統的に黄道12星座はおひつじ座から数えることとなり、春分の日から約一か月の間が「おひつじ座」の時期となっているのです。
昔は春から始まっていた一年は、今は冬に始まります。春分点も少しずつ移動し、今はうお座にあるのだそう。
これだけでも、私たちが今見上げる夜空が過ごしてきた長い長い歴史の一端を垣間見たような気がしませんか?
すとうさんはこう言います。
星座がわかると、空を見上げたときに考えることがふえる。
5文字の物語が、宇宙を知るきっかけになるといいな。
5文字の物語をきっかけに、見えなかったものが見えるように、確かになります。壮大な星の世界に触れられる一冊です。
レビュアー
ガジェットと犬と編み物が好きなライター。読書は旅だと思ってます。
twitter:@752019