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薬に頼らず血圧と血糖値を下げたい! 1日3分の血管トレーニングで血管を鍛える。

2023.12.19
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血管は筋肉

以前、ある健康機器の営業の人にすすめられて、毛細血管スコープで自分の指先の毛細血管をチェックしたことがある。結果は「(年齢のわりに)めちゃくちゃ毛細血管が元気なので、うちの健康機器とかは全然いらないですね、ハハ……」という、喜ばしいが若干気まずいものだった。たしかにモニターに映し出された私の毛細血管は、他の人のそれと比べて「ぎゃあ」と声が出そうになるくらい明瞭で血液の往来が激しそうだったものの、だからなんなのだろう。

血管が元気だと何がいいのかサッパリわからなかったのが心残りだったが、『1日3分! 血圧と血糖値を下げたいなら血管を鍛えなさい』を読んで、なるほどなあと得心がいった。

私たちの体は細胞でできています。(中略)
ではその細胞一つ一つに万遍なく酸素や栄養などを運んでくれているものが何かというと、それが血液です。(中略)
それほどまでに重要な血液が通る道路が、血管です。その道路がボロボロになっていたり、道路上に大きな石が置かれていたりしたらどうなるでしょう?(中略)
そう考えると、健康のために食事に気を使いちゃんと薬を飲んでいても、肝心な血管が弱っていたらあまり意味がない、ということが自ずとわかってくるのではないでしょうか。

本書が掲げる「血管を制する者はすべてを制する 」というコンセプトはすんなり腹に落ちる。では血管を制するにはどうすればいいのか。

血管を鍛えるには、筋肉を増やし、動かしていくことが鍵になります。ですが、そもそも血管が弱るほど筋肉量が落ちている人が、いきなり筋トレをおこなおうとしても難しいでしょう。よくお医者さんは、「毎日1万歩歩きましょう」などとすすめてきますが、距離にして約7kmを毎日歩ける人は少ないですし、できたとしても面倒になってやめてしまうのがオチでしょう。何よりやみくもに運動をおこなったところで、血管を鍛えられるかというと、違います。血管を鍛えるには、それ専用の運動をしなければなりません。

ここを読んで「最近イノシシが怖くて散歩に行けない」とこぼす高齢の家族を思い出した。2023年はクマ出没のニュースもよく耳にするし、運動したくても運動量が減っている人は多いはずだ。自分は筋トレを好きでやっているからよくわかるが、誰にでも「ジムに行こう!」なんて私は絶対に言えない。お金もかかるし手間もかかる。それに比べて、本書の著者である加藤雅俊先生が考案した「加藤式血管トレーニング」は畳一枚ぶんくらいのスペースと3分というわずかな時間があれば簡単におこなえる。

加藤式血管トレーニングの概要はこちら。


各動作の詳細を読みながら実践してみると、背中の筋肉や腿裏にギュッと刺激がある。いずれも筋トレ界で「最初に効率よく鍛えましょう」とされる大切な部位だ。そして心拍数が程よく上昇して、運動後の爽快感がわずか3分で味わえる。

この加藤式血管トレーニングによって、血圧が下がり、血糖値も下がるのだという。しかもダイエット効果というオマケつき。


筋肉の種類や仕組みの解説を読むと「毎日3分だけならやってみよう」という気になる。

血管を知り、簡単なトレーニングと正しい食事で改善を図りましょう、さすればメリットがたくさんありますよ、というのが本書のテーマだ。

血管が弱る理由

本書が指摘する「血管が弱ってしまう意外な原因」の一部を紹介したい。運動不足に加え、よかれと思ってやっていることが逆に血管の健康を損なっているというのだ。

たとえば「野菜中心の食事」。

血管は筋肉です。(中略)筋肉はタンパク質を栄養源としますから、血管も元気でいるためにはタンパク質が必要です。ところが間違った健康知識から、多くの人がお肉や油の摂取を控えるようになりました。その結果、血管が栄養不足で弾力が失われ硬くなることで、血流が悪くなって心臓や脳の病気を引き起こしている、ということがわかってきています。

本書は糖質オフでの体型コントロールには限界があることも指摘している。さらに血管と血液を健康に保つための食事法も紹介されているのでぜひ読んでほしい。どれも簡単に用意できるものばかりだ(しかもおいしい)。

そしてもうひとつショックなのは「薬」の影響だ。高血圧になると処方される降圧剤によって、血液はドロドロとなり血管を弱らせているのだという。

血圧を下げる薬にはいくつか種類があって、もっともよく処方されるのは、血管の収縮作用を弱めることで血管を広げ血管壁にかかる負担を減らす、というものです。しかし、長期間の服用で血管を広げた状態が続くため、足のむくみやめまい、ふらつきといった副作用も出ます。

血圧と降圧剤の関係については、加藤先生の著書『薬も減塩もいらない 1日1分で血圧は下がる!』で、より詳しく紹介されている。

ちなみに、本書が重視しているのは血管をしなやかに保ち、血流をよくすることであり、
ときどき耳にする「ゴースト血管」については、加藤先生は「血管が消滅するなどありえない」と断じる。

メディアは何やら恐ろしげな名前をつけて「アナタの体が危ない!」と煽(あお)ってきますが、大半のことは簡単な運動と正しい食事で改善するものです。ですから過剰に怯(おび)える必要はありません。ましてや「じゃあ血流をよくする薬を飲もう」などという、根本解決にならないことは考えないでほしいと思います。

そして正しい食事については、こんな指摘も。

ビタミンに限らず、サプリメントで摂取した栄養素はすべて吸収されていると思いがちですが、実際は違います。
薬理学では、摂取した医薬品がどれくらい体内に吸収されているかを考えて、新薬などはその吸収率を前提に開発されます。サプリメントは「薬」ではありませんので、この吸収率の基準がありません。吸収率0%でも売られている商品はたくさんあります。

自然の食材から得られる栄養の大切さがよくわかる。

「簡単な運動」や「正しい食生活」は一見すると地味なものだし、テレビのネタとしても、SNSでの自慢話としても、いまひとつ映えない。でも、誰でも無理なくコツコツ積み上げていけることでもある。とくに、加藤式血管トレーニングは、まずは毎日3分といわず1分からでもチャレンジしてみてほしい。顔を洗うように習慣化したらこっちのもの。きっとお腹が空いて食事が楽しくなるはずだ。

  • 電子あり
『1日3分! 血圧と血糖値を下げたいなら血管を鍛えなさい』書影
著:加藤 雅俊

【1日3分のシンプルな体操でOK!】

健康本ベストセラー連発の著者が教える「血管トレーニング」で、血圧と血糖値を下げる!

「スーパーマン体操」→「スケート運動」→「ストレッチ」の3ステップ!

【血管は鍛えるとどんなメリットが?】

血管は筋肉。つまり鍛えることができます。

血管が丈夫であれば、心臓病や脳出血、脳梗塞といった疾患のリスクを減らせます。

血管が丈夫なら、血流がよく、体中の細胞に酸素や栄養がたっぷり運ばれますし、不要物もしっかり回収されて排出されます。人間の体というのはすべて細胞から成り立っていますから、細胞の一個一個が元気であれば、病気にもなりませんし、不調を感じることもありません。

細胞に酸素や栄養を運ぶ道である血管が元気になれば、今抱えている不調はもちろん、病気を改善させることもできるのです。

【ノーベル賞理論を実践!】

そこで注目したのが、ノーベル賞受賞の理論、「NO(エヌオー)」=一酸化窒素。NOの分泌を増やすことで、強くてしなやかな血管にします。

また、血管周辺の筋肉を刺激することで、血管(筋肉)も鍛えます。

この体操を継続的に行うことで、
(1)血圧が下がる
 →NOの働きで薬や減塩に頼らず、血圧を下げることができます
(2)血糖値が下がる
 →筋肉を増やすことで、ブドウ糖を消費しやすい体になります
(3)内臓脂肪が減る
 →脂肪燃焼のカギを握る、「遅筋」にもアプローチ。「Wエンジン」のスイッチを入れます。

体操は、1日たったの3分!
筋肉である血管を、効率よく刺激する体操で、身体の諸問題を解決しましょう。

【おもな内容】

第1章 これだけでOK 加藤式血管トレーニングとは
第2章 現代人の血管は弱っている!
第3章 心臓、脳……血管が硬いとこんなに怖い!
第4章 鍛えることで、血管がしなやかになる
第5章 血管と血液を健康にする食事

※本書は、2019年10月29日に小社より刊行された『血管を鍛えるとすべてよくなる! 血圧も、血糖値も、内臓脂肪も!』を、改題のうえ、新書化したものです。

レビュアー

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花森リド

ライター・コラムニスト。主にゲーム、マンガ、書籍、映画、ガジェットに関する記事をよく書く。講談社「今日のおすすめ」、日経BP「日経トレンディネット」「日経クロステック(xTECH)」などで執筆。
twitter:@LidoHanamori

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