眠れない夜に寄り添う言葉たち
鬼はいつだって夜にやってくる……。これはオバケや幽霊の話ではありません。人を苦しめる怖い妄想「疑心暗鬼」のことです。「あの人はどうしてあんなひどいことを言ったんだろう」「彼の本当の気持ちって?」「私って一生ひとりなのかな」……そんな不安やイライラが頭の中をグルグル回り、眠れない夜を過ごしたことはありませんか?
『眠れない夜の恋愛処方箋』は、恋愛や婚活に悩めるたくさんの女性を“ど本命婚”に導いた、大人気恋愛コラムニスト・神崎メリさんが書き下ろした格言集です。恋愛はもちろん、将来のことや人間関係、親やお金のこと……。
夜と心の暗闇におびえるあなたに、そっと寄り添う80の言葉が収録されています。
タイトルに「恋愛処方箋」とありますが、この本では恋愛や結婚だけでなく「コンプレックス」「友達との関係」「親」「人生全般への不安」といった幅広い悩みの種に触れています。その理由を神崎さんはこう説明します。
別々の悩みに思えますが、すべては心の奥底でリンクしています。
家族との関係が恋愛に影響したり、誰にも頼らず生きていくにはお金がないと!と思い詰めて焦ってしまったり……。それぞれの悩みは心の奥でつながっていて、愛のことを深く考えていくと、結局は避けられない人生の課題にぶつかるのだそう。
だからこの本はどこからめくってもいいのです。
「元カレのひどい一言が忘れられない」「あの子は玉の輿かぁ……いいなあー!」などなど、傷ついた経験、嫉妬、焦り、不安、孤独感……「怖いもの」たちがその姿を現す夜。苦しくて眠れない胸のざわめきを乗り越えるための言葉たちです。
悪い妄想が始まったら、この本を開きましょう。きっと、鬼を追い払ってくれるはず。
鬼はいつだって夜に来る。疑心暗鬼ってカタチでね。
朝になったらいなくなるから、鬼に飲み込まれないようにね。
心のトゲが抜けていく
神崎さんと言えば、読む人の目を覚まさせるような恋愛指南が印象的ですが、この本は少し違います。ココにあるのは、核心をついてはいるけれど、厳しさ控えめの絶妙に優しい文章です。たとえば、誰でもきっと経験のある、こんな夜はどうしたらいい?
神崎さんがくれるのは、私たちをちょっと冷静にしてくれる言葉です。
「なんであんなことを言ったの?」「私のことなんてどうでもいいの?」そんなLINEを彼にぶつけても、状況が良くなることはないでしょう。「最悪の状態」になる前に、どうしたらいいかを教えてくれてよかった……! このテキストの短さも、“黒じゃない”文字の穏やかさもいい。刺々(とげとげ)しかった心が和らぐのが感じられると思います。
また、考えすぎて眠れない夜もあれば、何も考えたくないのに目が冴えてしまう夜もあります。
昼間考えればもう少し冷静になれることでも、悪い方へばかりグルグル悩んでしまいがちな夜。好きな漫画を読んだり、推しの姿を拝んだり……。そうしているうちに、自然と眠気がやってきます。「よく寝たなあ」と思える朝を迎えられたら、また頑張ればいい!
また、「お母さん」に対する複雑な気持ち……。全くないという人は少ないのでは?
この気持ちへの処方箋を読んで、なんだか涙が出てしまう人もいるかもしれません。でも「それでいいんだよ」と言ってもらえたような気持にもなれます。心のトゲが抜けたら、穏やかな眠りはもうすぐそこです。
心の声を拾って
悲しくなったり、イライラしたり、モヤモヤしたり……。自分の心の声を拾ってあげていますか? 神崎さんはそう問いかけます。
心の声は人生を豊かに幸せに生きるための羅針盤。
他人の声より心の声に寄り添ってね。
胸の内でざわめく声も、ふとした違和感も、自分を幸せに導くためのものだとしたら、少し気が楽になりませんか?
この本は、一冊を通じて、「味方だよ」というスタンスで書かれているのがとても嬉しく、安心できます。「本を読むぞ!」というエネルギーのない日でも読みやすく、すっと心にしみてきて、優しい友達が泊まりに来てくれた日のような安心感があります。できれば紙の本で、いつも枕元に置いておきたい。
「みんな同じようなことで悩むんだなあ……」と目次を眺めていると、一部ピンクになっている文字列があることに気が付きました。その頭文字を拾うと、思わずこうつぶやきたくなるような、ある言葉が浮かび上がります。
ありがとう、ホントにそうだね。深呼吸して今日はもう寝ましょう。おやすみなさい!
レビュアー
ガジェットと犬と編み物が好きなライター。読書は旅だと思ってます。
twitter:@752019