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2023.08.16

レビュー

周りと差がつく計算力を手に入れる! 計算視力を身につければ大きな武器になる。

もっと早く会いたかった

計算力に自信はありますか? 「ない」、はたまた「スマホも電卓もあるし、計算力って必要?」という人もいるかもしれません。でも、「このパンは143円だから、5つ買えば715円か」「後輩を焼き鳥屋に連れてきたけど、今まで食べた分で大体いくらになるだろう?」こんな計算が頭の中でサッとできたら、便利なだけじゃなくどこか楽しい気分になりませんか?

「計算力が高い」とは、どういうことでしょう? まずは、次の式の答えを暗算で求めてください。難しいものではないけれど、制限時間がかなり短いです。


「3秒? 5秒? さすがに無理」と思いますか? 私は思いました。
しかし、『計算力を強くする 完全版 視点を変えれば、解き方が「見える」』を数ページ読み進めると、これがあっさり暗算で解けるようになるのです。これが計算力か。ほんの数分前の「無理」が、「私にもできる!」に鮮やかに変わる楽しさ……。ああ、この本にもっと早く会いたかった!

この本は、その名の通り「計算力」の向上に特化した本です。著者の鍵本聡さんは、高校教師、大手予備校数学科講師などを経て、現在は学習塾の代表を務めています。
「どうしたら計算力は強くなるのでしょうか?」
生徒や保護者のそんな切実な声を受け、「生徒の立場からの学習法」を探求したのが「計算力を強くする」シリーズです。本書は2005年8月に刊行した『計算力を強くする』と、2006年12月に刊行した『計算力を強くする part2』の内容を厳選・再編集の上、新たなトピックを一部加えています。

計算力は子供や、受験生のためだけのものではありません。決断が損得に直結するビジネスシーンなどにおいて、社会人にとっても大きな武器になります。鍵本先生は、計算力の向上には「勉強したい!」という熱い気持ちが重要だ、と語ります。でも、受験や勉強から離れて何年も経ち、しかも日々忙しい社会人も計算力を手に入れることはできるのでしょうか。

では「熱い気持ちがないんだけど,どうすればいいの?という方にまずやってほしいことは、簡単な問題を解けたときに「やった!」と思うことです。(中略)ともかく本書は,ゲームをする感覚で,楽しんで読み進めてほしいと思います。

先ほど、計算は子供や受験生だけのものではないと言いました。本当にそうで、スキルを伸ばす意味だけではなく、とにかく「解ける」って楽しいんです! この本で身につくのは、ただ時短で計算する技術ではありません。様々な角度から「計算」を眺め、計算するまでの先読みを行う能力です。計算式の「見方を変える」ことで「解き方が見える」瞬間を何度も味わうことができます。「難しい」が「やった!解けた!」に、だまし絵のように変わる嬉しい驚きを体験してください!

解き方を「見る」力

読者の皆さんは次の式をすぐに計算できますか?
55×22=  (制限時間5秒)
このような計算を速く,しかも間違えずに実行するためのキーワードが「暗記力」と「計算視力」です。

“視点を変えれば、解き方が「見える」”とタイトルにあるとおり、本書は私たちに解き方を「見る」力をつけさせてくれます。
小学校で習う「九九」。1桁×1桁の答えを暗記させられたものです。「九九」とは、正しい答えを得るための必要最小限の知識だと鍵本先生は言います。そんな基礎中の基礎である九九は丸暗記していても、2桁の計算となると筆算に頼る人がほとんどでしょう。計算が複雑になるとはいえ、暗算に比べてだいぶ時間がかかってしまいますよね。しかし

2桁の数字が登場するかけ算の中にも,日常生活でかなり出現頻度の高いものが存在するのです。

よく使うかけ算の解を丸暗記することで、時間のロスをなくすのが鍵本先生の言う「暗記力」です。

こうしてみると、覚えるべき数字は意外に少ないかも……。九九の拡張版として丸暗記したいところです。
また、計算視力とは鍵本先生の造語で、「数式を頭の中で置き換えて、解きやすい形に変形する力」を指します。

先ほどの「55×22」を頭の中で解いてみましょう。この式は

55×22=55×(2×11)
=(55×2)×11
=110×11

といった形に変形できます。
ここで、暗記した「よく使うかけ算」の「11×11」の値に“0”をつければ……。
あっという間に2桁のかけ算が解けてしまいました。密接な関係にある「暗記力」と「計算視力」を身につければ、解き方を「見る」力が手に入ります。
式を置き換えて、暗記を活用する……。そのとき、脳の中で記憶の電流が走り、最短で「正解」にたどり着く過程が見えるような気がします。これは、ちょっとした中毒になる気持ちよさです。

ところで、ここまで「かけ算」の話しかしていないことにお気づきでしょうか?
この本では最初にかけ算スキルを鍛えたのちにたし算に発展していきます。読み進めると、たし算が思いのほか奥の深いものであること、かけ算が「重要な基礎」であることが分かってきます。こんな風に、「小学校で習ったこと(自分の中の常識)と違うな」と驚くことも、脳を活性化させてくれると感じます。

社会人も楽しい「損得勘定」

社会人にも大いに役立つのが、第3章の「損得勘定も計算力のうち」でしょう。


イラスト:ムロフシカエ

可愛い後輩にお寿司をおごるには、いくらあれば安心なのか? “あるある”なシチュエーションで役立つ計算方法が紹介されます。
また、今まで手帳を見ないとわからなかった先の日付の曜日も、計算で出せてしまいます。社会人にとっても「計算力」が強いスキルであることが実感できるのではないでしょうか。

鍵本先生は、どんな勉強も、上達の秘訣は「使うこと」だと言います。計算力もまた、日常生活で使えば使うほど「計算視力」が付き、力となっていくでしょう。日々のちょっとした場面で「できた!」「やった!」と思う瞬間が増えていくのです。目からウロコを何枚も落としてくれるこの本の楽しさに、ぜひ触れてみてほしいと思います。

レビュアー

中野亜希

ガジェットと犬と編み物が好きなライター。読書は旅だと思ってます。
twitter:@752019

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