今年のNHK大河ドラマ『どうする家康』の主人公、徳川家康は、いかにして天下人となったのか。幼少で母と生き別れ、少年時代は織田や今川の人質として各地を転々とした家康は、何度も訪れる人生の節目で、その都度難しい選択を迫られたに違いありません。
本書では桶狭間、三河一向一揆、三方ヶ原、小牧・長久手、関ヶ原、大坂の陣などの戦いだけではなく、本能寺の変からの伊賀越え、秀吉による関東転封、そして松平から徳川への改姓といった転機を、歴史時代小説の精鋭13人がそれぞれに描きます。各作品は20ページ程度とコンパクトですが、すべてが新作、さらに地図やイラスト、年表までを盛り込んだ贅沢な短編集です。
歴史にはもちろん史実がありますが、あの時この道を選んでいたら、もしこうなっていたらと考えるのも楽しみのひとつ。13編の中には大胆な歴史改変作も含まれていますので、是非それを探しながら読んでください。
──講談社文庫出版部 小林龍之
レビュアー
講談社文庫出版部