勉強って、ほんとは楽しい
子どものころ、漢字ドリルが嫌いでした。「ただただ繰り返し漢字を書く」作業に興味が持てず、退屈だったのです。読書で漢字を覚えることはできたけど、字の書き取りは面倒くさい。大人になるにつれ、パソコンやスマホによって字を「書く」機会が減ったのをいいことに、私はどんどん「漢字、読めるけど書けない」大人になっていきました。
ここに「退屈」とは無縁の漢字ドリルがあります。『転生したらスライムだった件 転生 漢字ドリル』は、大ヒットアニメ『転生したらスライムだった件』の主人公・リムルの冒険を通じ、小学校で習う漢字の総復習ができるドリルです。
このアニメには、意外にも多くの漢字が登場します。好きなアニメや漫画の影響で知識を得たり、語彙が増えることも多いですよね。「学習」に「好きなアニメの世界観」がミックスされると、“知る”って楽しいことだったんだと思い出します。
学習を終えたら「魔国連邦(テンペスト)」の住人になれる“住民票”や、
名前を書き込める特製シールも収録されていて、
アニメ『転生したらスライムだった件』の世界観を楽しみながら、漢字学習を進めることができます。詰め込み学習で漢字が苦手になった私にとっては、「子どものころに、このドリルがあったらなあ」と、今の子どもたちがうらやましくなる1冊でした。
ストーリーに沿って穴埋めしよう
この漢字ドリルは、アニメ『転生したらスライムだった件』のストーリーに沿った漢字を、文章の穴埋めをしながら書くことで、実践的な漢字力を身に付けることを目指しています。漢字の監修は「南雲国語教室」を主宰されている、南雲ゆりか先生です。小学3年生までの漢字を学べる「Level 1」を、ストーリーとともに見てみましょう。
大手ゼネコン勤務のサラリーマン・三上は、後輩カップルをかばって通り魔に刺され、命を落としてしまいます。「痛い」「寒い」……などなど、死にゆく三上が感じたことは、それを解決するスキルとして与えられ、三上はスライムとして異世界に転生するのでした。
スライムとなった三上は、転生した世界の洞窟で、封印されたドラゴン「暴風竜ヴェルドラ」に出会い、そこで「リムル=テンペスト」の名を得て、様々な出会いを経て魔物の町を作っていきます。
さて、この場合の「きく」は「聞く」? 「聴く」? それとも「訊く」? 同じ読みの漢字は、意味に応じた使い分けが必要です。
このドリルは、漢字の「使い分け」についても解説してくれます。
「聞く」の場合は、音や声が自然と耳に入ってくるときに使用し、「聴く」の場合、音楽や講義など、積極的に耳を傾けていると気に使用します。
では、先ほどのシーンなら、「聞く」が正解ですね。他にも、
ヴェルドラの場合は、洞窟の中で、「一人っきり」であり、「ずっと独り」だったため、どちらも正しい表現になります。
といった具合に、ストーリーや状況と合わせて解説を読むことで、漢字の使い分けが自然と理解できます。
「Level 2」では小学4年生まで、
「Level 3」では小学5年生まで、
「Level 4」では小学6年生までの漢字を学べます。
ストーリーの進展に沿って漢字もレベルアップしていくので、自然とムリなく学習が進みます。また、このドリルは新学習指導要領に対応しており、巻末に小学1~6年生で習う1026字の漢字一覧が掲載されています。
小学生の学びとしてだけでなく、中学生以上の漢字の基礎固め・総復習にもピッタリです。
好奇心を刺激する! 充実の「特別授業」
字の成り立ちや、意味を知るとグッと面白くなるのが漢字学習です。漢字についての好奇心を刺激する、盛りだくさんのコラム・「特別授業」もこの本の大きな魅力です。
漢字のパーツが何を指しているか学んだら、
アニメに登場するモノの漢字を解析してみるのも楽しい。イラストが添えられていることで、
この部分がツノ……ですかね?
と、イメージできるのもいいですね。
その字の意味を示すことも多い重要なパーツ「部首」にも注目してみましょう。
難しそうな漢字も、字の成り立ちや部首を知れば、「知っている字」の組み合わせで書けることに気づくでしょう。「意外と簡単!」と、自信を深めるきっかけになるかもしれません。バラバラだった漢字の知識たちが紐づき、広がるのを感じます。
そんな中、「そうなの!?」と驚いたのがこのページ。漢字を上手に書くためのスキル「永字八法」が、すべて詰まった一文字があるというのです。
「永」の一文字に、すべての太刀筋
……もとい、書き方が詰まっているのです。
「書き取り五本修行」で、字を書く上での基本的な技法を理解すれば、漢字の書き方・知識だけでなく、漢字をきれいに書くためのペン運びもきっと身につくはず。
復習(リベンジ)と言えば……! 『東京リベンジャーズ』で漢字を学ぼう
漢字が多い漫画、そして復習(リベンジ)と言えば……? そう、『東京リベンジャーズ』!
『東京リベンジャーズ 復習 漢字ドリル』も、『転生したらスライムだった件 転生 漢字ドリル』と同様に、「東京卍會」の仲間とともに、アニメ『東京リベンジャーズ』のストーリーに沿って漢字を学べます。付録のシールも、ファンにはたまりません。
作中のシーンとリンクさせると、漢字の書き取りは、俄然(がぜん)楽しくなります。
小学校では習わない難しい漢字にも、背伸びして挑戦したくなるでしょう。こんなちょっとした掛け合いも楽しい。
「小学生の漢字なんて(楽勝でしょ)」と思っている大人もドキッとするのが「書き順」。確かに、「武」も「道」も、書き順を間違うととたんに形が崩れてしまう漢字です。主人公の名前を書くことが、書き順の学習に効果的な字のチョイスになっているのがさすがです。
子ども向けに見える「漢字ドリル」ですが、「転スラ」の、また「東リベ」の楽しいひと時を手に入れたと考えると、子どもはもちろん、作品ファンの大人たちにとっても良い本だと感じます。このドリル、大人のリフレッシュとしてもおすすめです。
レビュアー
ガジェットと犬と編み物が好きなライター。読書は旅だと思ってます。
twitter:@752019