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2022.01.07

レビュー

大評判のクッキーブランド「クッキー同盟」のオリジナルレシピ初公開!

英国で愛される伝統の味がクッキーに

「クッキー同盟」のクッキーを贈ってもらったことがある。おしゃれな缶に、ラズベリーやジンジャー、レモンとメレンゲなどをあしらった美しいクッキーがぎっしり詰まっていた。どれも衝撃的に美味しく、複雑な味わいを持ち、1枚食べるだけでケーキを食べたような満足感でいっぱいになった。

本書『「クッキー同盟」の英国仕込みのクラフトクッキー』は、「クッキー同盟」初のレシピブックだ。「クッキー同盟」は実店舗を持たず、イベントとネットのみの販売ながら、おいしさと個性的なパッケージで人気を集める。本書では「英国仕込みのクラフトクッキー」をコンセプトに、シンプルな材料で作られた35種のクッキーを紹介している。家庭でお菓子を手作りする「ベイク文化」のある英国で長く愛されているケーキやタルト、パイといった伝統の味を独自にアレンジ。ベーシックなクッキーから、フルーツを使った定番クッキー、ジャムやアイシング、ビールやスパイスを使う変わり種クッキーを、サクサク、ふんわり、ほろほろなど、さまざまな食感に仕上げたレシピたちだ。

本を開くと目に入る「クッキー同盟憲章」。

この、ちょっとクスッとくる「クッキー同盟憲章」と、

食べる人みんなが幸せになれる時間を提供することができたら、こんなにうれしいことはありません。さあ、英国クッキーの世界を楽しみましょう。

熱いメッセージに心をつかまれる。

本書で紹介しているクッキーたち。



バリエーション豊かでどれも美味しそう! 英国といえば……のスコーンやプディングを思わせるものや、クッキー缶に入っていた「ヴィクトリア・ラズベリー」や、「スパイシー・ジンジャーズ」のレシピも収録されている! あのおいしさを再現できるかも……とテンションが上がる。早速見てみよう。

各ページから「クッキー愛」が伝わる



「ヴィクトリア・ラズベリー」。写真でもわかる香ばしそうな生地と、ツヤツヤのラズベリージャムが目をひく。クッキーそのものがおいしそうなのはもちろん、スタイリングも写真も美しい。美しいクッキーと、美しいお皿。クッキーへの愛を感じる。

イメージは、ヴィクトリア女王がこよなく愛したと言われるヴィクトリアケーキ。
シンプルなクッキーにラズベリージャムをたっぷりと。

「ヴィクトリア・ラズベリー」はサクッとした食感のあとに豊かなバターの風味が広がる。濃厚なラズベリージャムは香り豊かで甘酸っぱい。プチプチとした食感がアクセントだ。シンプルながら贅沢な味わいをもつ1枚だ。

このクッキーにはイメージソースとなるお菓子がある。英国のティータイムに欠かせない人気の定番お菓子、「ヴィクトリア・サンドイッチ・ケーキ」だ。

もともとはヴィクトリア女王のために作られたお菓子。バター・砂糖・卵が1:1:1の同割で作るスポンジに、いちごなどのジャムやマーマレードをはさんだ素朴でシンプルなケーキです。現在では生クリームをはさむなど、豪華に進化したものも。

本書は、英国の伝統菓子を手軽に作れるよう、クッキーにアレンジしたレシピ集でもある。作りたいクッキーの成り立ちを知るとより楽しい。

ヴィクトリア・ラズベリーのレシピに戻る。バター・砂糖・卵に小麦粉、ラズベリーと、シンプルこの上ない材料と、5工程のシンプルレシピ。下準備も書かれているので、失敗なく作れそうだ。よく読むと、「オーブンを180度に温めておく」と書かれている。焼く工程では「170度で20分焼く」とあるのになぜ?

オーブンの扉を開けると庫内の温度が下がるので、焼く温度より高めに温めておくといいらしい。小さいことだが、確実にクッキーの焼き上がりに影響を与えるポイントだ。こんな小さなコツがまとまった「クッキー作りのコツ」コラムも収録されているのも心強い。これなら、初心者でもおいしいクッキーが作れそうだ。どのページからも「すべてはおいしいクッキーのため」というような、クッキーへの愛が伝わってくる。

ビールにチーズ? 意外なレシピも

難易度高めなもので試してみたいのは「ギネス・チョコクリーム」。


ギネスとは、あのギネスビールの「ギネス」だ。アイルランド人がこよなく愛するギネスビールは、独特の風味が特徴で、料理や製菓に使われることも多いそう。「ギネス・チョコクリーム」は、ギネスビールに相性の良いチョコレートを加え他生地に、クリームチーズアイシングをサンドした柔らかい食感のクッキーだ。このクッキーを味わうベストなタイミングは「できたて」。ホームメイドだからかなう、贅沢な楽しみ方だと思う。

甘いクッキーだけでなく、スパイスとチーズ、ベーコンを使ったおつまみ系クッキーもある。


「スパイス・チーザー」「セイボリー・ベーコン」は、生地にチーズが入ることでほろっとした食感になるという。夕食前に生地を仕込み、食事の間に焼いておけば、食後のお酒のおともになってくれそうだ。週末の夜に試してみたい一品だ。

本書のどのレシピも、「これだけ?」と思うほどシンプルな材料で作れる。材料や、ジャムやアイシングが共通のクッキーもあるので、一度何か作ると、他のクッキーにも挑戦したくなる。正直なところ、お菓子は作るよりも買った方が美味しいと思っていた。手に入りにくい材料を買い求める手間やお金もかかる、と。でも、この本のクッキーは違う。材料もレシピもシンプルだし、手に入りやすいものばかりだ。その分、バターや粉、フルーツには少しお金をかけて、質の良いもので作りたい。そうすれば、生地を寝かせて待つ時間さえ、楽しみな気持ちでいられるだろう。そんなふうに、クッキーを味わう瞬間だけでなく、作る段階からずっと豊かな気持ちにさせてくれる1冊だ。

レビュアー

中野亜希

ガジェットと犬と編み物が好きなライター。読書は旅だと思ってます。
twitter:@752019

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