幸せに食べてやせる
先日「努力なしにできる太らない生活」としてwebで目にしたのは「満腹になるまで食べない」「定食は食べない(多いから)」「外食では主食を頼まない(家で食べられるから)」といったコツだった。それはわかる。確かにそれを努力と思わない人は、そもそも太ったりしない。
平均的な身長の女性にとって、PFCバランス*に気を付けつつ栄養も摂って、ある程度の満腹感を得つつ、摂取カロリーを抑えることは至難の業。おなか一杯おいしいものを食べてやせるなんて、もはやSFなのでは……?
そんなことはない。『mameの楽やせ低カロ糖質オフレシピ』が、「食べたい、でもやせたい」を叶えてくれる。
*PFCバランスとは、摂取カロリーのうち3大栄養素の「P=たんぱく質」「F=脂質(脂肪)」「C=炭水化物」がどれくらいの割合を占めるかを示した比率のこと。
本書は、料理研究家・糖質OFFアドバイザーであり、フォロワー12万人以上を擁する大人気インスタグラマー、mameさんの初のレシピ本だ。
mameさんは、ハワイ滞在中に糖と脂質たっぷりの食事でプラス7キロ、帰国後、糖質制限により2ヵ月でマイナス5キロを達成。おからやオートミールを取り入れた、おいしくてヘルシーなレシピをInstagramなどで紹介している。
糖質とカロリーを抑えた食事は味気ないものになりがちなのに、本書はそのイメージを裏切るレシピで構成されている。
本を開いた瞬間、もうおいしそう!
フルーツサンド、チーズフォンデュにラムチョップ、だし巻きバーガーも……。ダイエット中には、食べたいけれど選べないものばかり。これで本当に低カロリー、かつ糖質オフなの? ダイエット関係なく、ふつうに食べたいぞ! 人気のバスクチーズケーキにいたっては、3種類もレシピがある。写真にカロリーと糖質が表示されていて、見た目から想像できないヘルシーさにも驚く。
落とし穴なし! 初心者に優しいレシピ
おいしそう! と感じたメニューのレシピに目を通して気づくのは、初心者を泣かせる「レシピあるある」がないことだ。レシピ本って基本的には、「料理の習慣があまりなくても、レシピ通りの手順で作れば、それなりにおいしい料理が出来上がるもの」でしょう? プロが知見を深めるためのものもあるとはいえ、素人の味方のはずだ。それなのに。「作り始めてから目にする『ここで一晩寝かせます』」、「突然出てくる分量外の調味料やハーブ」など「先に言ってよ」案件に泣かされることがある。
本書には、そんな落とし穴はない。各レシピにはアイコンが表示されており、それぞれ「冷凍保存可能」「調理時間5分以内」「レンジのみの調理」という意味だ。アイコンもイラストも可愛くて気分が上がる。
「お料理楽しんでね~!」と、mameさんが言うだけあって、どのレシピもシンプル。「先に言ってよ」が入り込む余地がない。疲れている日でも、ちょっと頑張れば低糖質低カロリーな自炊が楽しめる。そう、シンプルなレシピは日々の自炊のモチベーションも保ってくれる。
オートミールが使いこなせるようになるなんて
インスタで話題のオートミールレシピが豊富なのもいい。マフィンやエッグベネディクト、キンパだって作れちゃう。
「満腹感がある」「おなかの調子が劇的に良くなり、結果やせる」と言われてオートミールを買ってみたものの、ちょっと持て余していた。オートミール自体はまずいものではない。むしろ、お茶漬けにして食べると割とおいしい。私はそれしかできないので飽きるけど。そこで、本書で紹介されている「オートミール塩パン」に、厚焼き玉子をはさめばこの通り。
先ほどのキンパといい、「オートミールってこんなこともできるの?」と驚かされるレシピが大ボリュームで紹介されている。「オートミールは飽きる」と思っている人は、ぜひ読んでほしい!
目も舌もだませる
このボリューム感で低カロリー・低糖質を叶えるために、本書でよく使われている材料がある。それが「ラカント」と「おからパウダー」だ。砂糖と同じ甘さがあり、0カロリーの「ラカント」と、低糖質で栄養価の高いおからパウダーを使うことで、ボリュームたっぷりでもカロリーカット・糖質オフ・満腹感キープがかなうのだ。この2つがあれば、マフィンだって低カロリー。
しかし、ダイエット的には敬遠される砂糖だが、その役目は、甘さをくわえるだけではない。「保湿する」「肉をやわらかくする」「パンを膨らませる」「美味しそうな焦げ目、テリを生む」といった作用がある。砂糖の特性が欠かせないレシピというのは案外多い。
たとえば、イタリアンプリンのレシピ。ラカントは甘さを加えることはできても、砂糖をこがしてできるカラメルにはなれないのでは……? 本書でそれを解決したのはなんと「コーヒー」!
決してただの「コーヒー味のソース」ではないカラメルを味わってみてほしい。
おいしくて感激したのは「揚げないチキンステーキ南蛮」。
揚げずにできるどころか、衣もつけないが、味はばっちりチキン南蛮なのだ。目も舌も十分「チキン南蛮を食べた!!」喜びに沸く。みんなの大好きなメニューを、かなり大胆に低カロ低糖質の食材に置き換えてアレンジしてあるのに、味気なさはゼロ。「食べる幸せ」「健康にやせる」を、シンプルなレシピで叶えてくれる本書は、手放せない1冊になりそうだ。
本書のメニューを数品作ってみるうちに、レシピを見て「これで本当にこの味になる?」と思っていたものも、予想以上においしく仕上がることがわかってきた。味つけのセンスがいいんだな……。「作ってみたい」が刺激される。今日は「納豆カレーまぜそば」にチャレンジしよう。
レビュアー
ガジェットと犬と編み物が好きなライター。読書は旅だと思ってます。
twitter:@752019