隠れ失言していませんか?
悪気なく発した言葉で相手の顔色が曇ったり、場の空気が凍ってしまうことってないですか。「え、まずかった?」と動揺するけど、何が悪いのか確信できないまま謝ることで、むしろさらに微妙な雰囲気になるのでは……。そんな気まずさを経験したことのある人も多いはず。
相手との距離が縮まらない。自分が話すと何かうまくいかないけど、理由がわからない。こういう話し方でいいのかな……? そんな迷いは心を疲れさせてしまいます。
たとえ同じ内容のことでも、その言い方によって相手が受ける印象は大きく変わるもの。職場や家族・友人との人間関係でいつも心が疲れてしまうのは、自分の思いをうまく言葉で表現できないせいかもしれません。
『人間関係で「疲れない心」に変わる 言いかえのコツ』は、相手に自分の気持ちをギャップなく伝える「言い換え術」を教えてくれる1冊です。
言葉が運命を、人間関係を変える
言葉には意識を変え、運命をも変える力があります。中でも顕著に変わるのは人間関係。
人間関係がよくなるかどうかは「ものの言い方」「口に出す言葉」にかかっていると言えます。
だからこそ、日頃から、言い方、話し方、言葉の使い方などを学び、「ネガティブな言葉」を「ポジティブな言葉」に言い換える技術を磨いておく必要があるのです。
本書の第1章「共感する言葉」を見てみましょう。
「努力は必ず報われます」っていけないの……!?
確かに、相手を傷つけたくて言うような言葉ではありません。しかし、一種の決まり文句ではあります。相手の気持ちに寄り添えていない決まり文句を、相手の心に届けることは難しい。適切な言い換え術は本書30ページで学ぶとして、この一言を心にとどめておきたいところです。
共感がなければ、どんな賞賛や助言も「だから何?」となりかねません。P20
こんな時あるある
口下手なのは決して悪いことではないと思います。口下手な人は、「余計なことをうっかり口に出してしまうだけ」なのは、周囲の人にも何となくわかることです。しかし、その一方で、大人になったら多少のことでは注意してもらえないのも事実。誰かの言葉にモヤっとした時、あえて指摘する人は少数派で、多くの場合は「黙ってその人と距離を置く」選択をするでしょう。それってすごく怖くないですか。
例えば「依頼を断られた時」。
断られたショックで、あるいは「なんとなく間が持たない」と感じ、「どうしようかなあ」と独り言のようにぼやく人、確かにいますよね。
しかし、逆の立場で考えると分かりますが、依頼を断るだけでも心苦しいのに、「どうしようかなあ」と言われても本当に困るんですよね。断る側も、困らせたくて断っているわけではありません。ひとりごとめいた「どうしようかなあ」も、食い下がられているように感じたり、「嫌味かな」とモヤモヤするでしょう。
こんな時「お忘れください」と返してくれると、本当に気が楽になるし、次回は必ず助けてあげたいと思うものではないでしょうか。食い下がっても、その場で状況がよくなるわけではないのなら、相手の気持ちを優先しておき、人間関係をいいものに保つ、という選択もアリですよね。
もし「自分が話すと、どうもうまく行かない。気まずくなる」と感じた経験があるなら、本書を通じて言い換え技術を磨いておくことは、決して損にはならないはずですよ。
疲れた人も大丈夫
この本の秀逸なところは、シチュエーション別に分類された言い換え術が、見開きでぱっと読めること。
人間関係に疲れている時って、何かを調べたり、本の中の必要な部分にたどり着き、それを自分なりにアレンジするような余裕はありません。精神的コストが高いのです。この本は、気になるシーンを目次で調べて、そのページだけ読めば的確な言い換え術がすぐわかるのがいい! いろんなシチュエーションが、細かく分類されているので、デスクに入れておき「今から部下に一言注意をしなきゃ」なんて時に見直す……。そんな使い方もいいですね。
使いこなせば味方が増えていく
本書は全体を通じて「大人だなあ」「こんな返しができたらいいな」と思うような言い換え例が多いです。とげとげしさがなく、優しい気持ちになれるコミュニケーション術や、「精神的に余裕があり、気配りのできる優しい人」に見える言い換え例が「あるある」なシチュエーションに沿ってたくさん紹介されています。今までの経験に照らして「相手はここにカチンときていたのか」と謎が解けることもあるかもしれません。
それでいて、自分を抑えているような無理を感じさせたり、言い換える側が一方的に我慢している窮屈さを感じないのもポイント。口下手な人、自分の気持ちを言葉にするのが苦手な人も、使いこなしていくうちに、味方が増えていく1冊ですよ!
レビュアー
ガジェットと犬と編み物が好きなライター。読書は旅だと思ってます。
twitter:@752019