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2021.07.11

レビュー

宅飲みが3倍楽しくなる!簡単激旨レシピ。ラズウェル細木の『グルメ宝島』 

好奇心と探究心のおもむくまま!

「この食べ合わせを思いついた人、やるな~」と感動するごはんが世の中にはたくさんある。先人たちよありがとうと思いながら、卵かけごはんやバインミーを食べている。きっと世界で最初にフランスパンになますと香草と茹(ゆ)でた牛肉を挟んで食べた人はドキドキしたはずなんですよ、おいしいかな、どんな味かな、って。好奇心と探究心が並外れて高いパイオニアがいたから、私は今日もおいしいバインミーを買うことができる。

ラズウェル細木さんのエッセイ漫画『グルメ宝島』も好奇心と探究心が四方八方に弾みまくる1冊だ。冒険の舞台は日本の居酒屋、香港のレストラン、 NY のローカルフード、そして自宅の台所。失敗も大成功もすべて等しく楽しい。

たとえば卵かけご飯に醤油とまちがえてウスターソースをかけてしまったら、どうすればよいのか?



まずは素直に味わえばよろしい。ラズウェル先生はちゃんと食べて、味わって、正直に評価する。「まずくはないし、旨い、でも違和感がある」と。ここからさらに踏み込むのがラズウェル先生。



そのポテンシャルを活かして違和感なく味わうためにどうすればいいかを思案中。こんなに「いいところ」を探してくれるなんて、私がウスターソースと卵かけご飯の立場だったらめちゃ嬉しいな~。



失敗によって誕生した新しいチャーハンだ。「加熱によってソースの酸味がとんでちょうどいい調味料になってる」は、私もこの本で紹介されているレシピを試したときに実感した。

「おいしいかもしれない」「どんな味なんだろう」という好奇心でどこまでも試していくのがラズウェル先生のスタイル。ある日そうめんをめんつゆではなく日本酒で食べる酒豪と出会った先生は、「そうめんと日本酒はたしかに旨い」と発見する。そして次に進むのは……、



やっぱり、いろんなお酒で試してみたくなるのだ。そうめんの薬味でミントは想像したこともなかったな……。本作のおもしろいところは、先生がおいしくないと感じたものはちゃんと「なし」と描いてあるところ。酒は酒でも、ビールはアウトだったんですね。

そしてコラムも楽しい。子どもの頃の思い出から食文化のおもしろさ、そして食への愛がつまっている。



あ~~~~、今すぐ卵かけご飯が食べたい!

本書には簡単につくれるおつまみレシピも紹介されている。週末の夕方からビール片手に作ってみた。まずはこちら。



「竹輪とセロリのソース炒め」



おしゃべりしながら作れるかんたんさ。なんとなく目分量でソースとみりんで味付けを試すのが楽しい。ウスターソースってビールがめちゃくちゃ進む味と香りだ。

次はこちら。



カレー粉とソーセージとパクチーっていう、私の世界では出会ったことのない者同士の1皿。

合うものなんですね。おいしい。一緒に食べてくれた家族曰く「はじめて遊びに行った人の家でこれが出されたら、いったい何者だ?と思う」ということで、簡単なのにインパクトもある。

こちらもやってみた。



「タコ焼き風とろろ焼き」。先生おいしそうに召し上がってますね。

ピカピカ! 青海苔を振りかけると一気にタコ焼き感が増す。しかも山芋100%の生地だから、ものすごくリッチなタコ焼きだ。

一度作り始めるとどんどん楽しくなってビールも料理をする手も止まらない。で、おいしかったのだけども綺麗に作れなかった料理がこちらだ。先生だって正直に失敗を教えてくれたのだから、私の失敗も正直に紹介したい。



「ソーメンお焼き」。こちらは数あるレシピの中でも特にラズウェル先生がオススメする「ラズウェル細木 厳選の7品」でもある。読んだ瞬間から「あ、これ作ろ」とロックオンしていた。

レシピのアドバイスに従って小さめのサイズにしたつもりだったが、おそらくもっと少量であるべきだったのだろう(あと酔っ払っていたのも敗因だ)。綺麗にひっくり返せずこの通り。

でもね、おいしかったんです! カリカリになったそうめんが香ばしい。ちなみに全体的に見た目が赤い理由は、紅生姜と愛媛の「五色そうめん」を使ったからだ。梅がねりこまれたフレーバードそうめん、おいしいよ!

ここまででだいぶお腹いっぱい+酔っ払いになったけれども、最後にどうしても作りたかった一品がこちら。
「焼きナスバターご飯」



こちらも「ラズウェル細木 厳選の7品」に名を連ねている。

ナスを魚焼きグリルに放り込んで約10分。途中で一部のナスが「ぼん!」と破裂したが、なんとか無事に立派な焼きナスとなり、タレで煮込まれ、このとおり。

バターと醤油の香りとトロっとやわらかい焼きナス、そして山椒。締めにこんなリッチなものを食べていいのかしら……とソワソワしながら、一粒残さず平らげた。

ああ楽しかった。試行錯誤しながらおいしさを探すって幸福な冒険だな。この本のおかげで、お馴染みの食材や料理がほんの一工夫とたっぷりの好奇心で大変身するのがよくわかった。そして「飲みに行きたーい!」と居酒屋がますます恋しくなった。呑兵衛のハートをくすぐる幸せな1冊だ。

レビュアー

花森リド イメージ
花森リド

元ゲームプランナーのライター。旅行とランジェリーとaiboを最優先に生活しています。

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