いつか自分に子どもが生まれて、何で何でと質問されるようになったら、「絶対に適当にごまかさないでちゃんと正確に答えるぞ」と誓って何年経ったでしょうか。しかしいざ実際に子どもを授かって実際に何で何で攻撃を食らうようになると、子どもの質問の量と幅広さにその誓いを破りそうになっていた昨今でした。
子どもの好奇心は底知れず、そして意表を突かれることばかりで最近ではこっそり検索して答えることばっかりになっていました。でも子どもは「お父さん」に聞いているのであって、Google先生に聞いているわけではありません。お父さんお母さんより先にGoogleやアレクサに聞いた方が早いなんて思われる前に、打てば響く感じで子どもの好奇心を満たしてやれるようになりたくありませんか?
「お父さん、すごい、何でも知ってるね」って言われたいじゃないですか。どうせ子どもが字を読めるようになったら自分で調べるようになっちゃうんだから。それまでは、だったら平易な言葉で完結にまとまっている本をざっくり覚えておけば良いんです。そんな悩める親にぴったりなのが、『アトムの科学なんでも百科』です。
アトムといっても「鉄腕アトム」ではなく、フランスで作られたカートゥーンタッチのテレビアニメ作品である「GO!GO!アトム」です。見慣れたアトムよりもポップでキュートな感じになっている新世代のアトムがナビゲーターとなって理解を深めてくれます。さすが科学の子の一族。地球の環境問題もテーマにしているそう。働いているお父さんお母さんはちょっと視聴するのは難しい時間帯ですが、アトムと地球環境ってすごく良いテーマですよね。
話は戻って、科学なんでも百科。
この本、大人が読んでいてもまったく幼稚じゃないのがすごいんです。
個人的なことでいえば、私はものすごく雑学系の本が好きで、暇があると読みあさっていた時期があるんですが、そういったいままで読んできた本に比べても、情報に過不足がなくて、そのうえとにかく理解しやすく書かれています。持って回った言い回しもありません。
たとえばこのページ。象って長生きなんだよ、という話を保育園か幼稚園で子どもが聞いてきたとしましょう。うちに帰ってきた子どもが私に「象って本当に長生きなの?」と聞いてきます。
こうです。こうまとまっているのです。
これ、社内資料を作るときの参考にもなるんじゃないかと思うくらいすごく美しくまとまっていて、
Q:ゾウって、本当に長生きなの?
に対するアンサーが
A:アフリカゾウは60~70年生きるといわれているよ
という答えをまず提示していて、そのうえで理解を深める周辺情報を見開きで用意しているのです。子どもの質問は飛びますからね、じゃあ「ゾウの赤ちゃんはどれくらい大きいの」とくることもあるし、「小さいネズミはどれくらい?」と来ることもあります。「人間は?」とか。
ゾウの詳細情報という水平方向にも、他の生き物の寿命という垂直方向にも網羅されているので、必要な知識がまとまっているのです。
他にも、お風呂に入るのをグズる子どもには、お風呂に入る理由ですとか
夜空の星は何個あるの?なんてことにも答えられるのです。
ここに挙げたページは本当に一部中の一部ですが、情報が古くないので大人が読むと知識を上書きできるというメリットがあるのでは無いかと思います。
AIやロボットにも触れられていて、新しく知ることも多いと思います。
ここまで、親目線でのすごい!という感想になっていましたが、子どもの食いつきもなかなかです。
いま現在私の子どもは年長さんなんですが、ひらがなとカタカナが読めるようになり、ふりがながあれば漢字も読めるようになっているので、自分で本書をパラパラとめくって勝手に知識を深めるようになっています。
そういう時、私は子どもの隣で本でも読むようにしているのですが、わからない単語や意味を都度聞いてくるので、それらの意味を答えるようにして、親子のコミュニケーションをとっています。
また、散歩しに一緒に出かけているときに、ふとした際に「ねえお父さん、知ってる……?」と、新しく仕入れたであろう知識を披露してくれるようにもなりました。
先日もこの船の項目を見たからか、500円玉貸してと言ってきました。自分で調べたり確かめるようになって、うれしさ8割、寂しさ2割な感じで成長を喜んでいますが、本書は長い期間、親子の教育を担ってくれる素晴らしい1冊であることは間違いありません(わたしは2年前くらいにほしかった)。
こどものなぜなに攻撃に備えて理論武装するもよし、友人の出産祝いにもぴったりです。
ポイントとしては、「親子でいっしょに楽しむ」ことですかね。
良い科学教育を!
レビュアー
静岡育ち、東京在住のプランナー1980年生まれ。電子書籍関連サービスのプロデュースや、オンラインメディアのプランニングとマネタイズで生計を立てる。マンガ好きが昂じ壁一面の本棚を作るものの、日々増え続けるコミックスによる収納限界の訪れは間近に迫っている。