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2019.06.13

特集

初期対応が重要! 正しい知識を身につけて食物アレルギーと上手に付き合う

■正しい知識を身につけて安心を手に入れる「食物アレルギー教室」

日本では、乳児(0歳児)の10人に1人、幼児(1〜6歳未満)の約20人に1人にみられるという「食物アレルギー」。世界的にも最も増加しているアレルギー疾患ですが、さまざまな噂や間違った情報に惑わされてしまうことが少なくありません。

日常生活、集団生活で食物アレルギーと上手に付き合っていくには、正しい知識を身につけることが大切。そこで、今回は、食物アレルギー研究の第一人者として知られる小児科医師・柴田瑠美子先生に、食物アレルギーについて伺います。

柴田先生の著書『国立病院機構福岡病院の食物アレルギー教室』は、柴田先生が、食物アレルギーから子どもを守るために立ち上げ、25年間にわたって開催されてきた「食物アレルギー教室」の講義をわかりやすくまとめた1冊。食物アレルギーは初期対応がとても重要です。重症化させないためにも、「どんなしくみで起きるのか」「どんな特徴があるのか」正しい知識を身につけましょう。

食物アレルギーって何? どうして起こるの?

私たちの体には「自己(自分)」と「非自己(自分でないもの)」を識別して、体内に侵入した異物(非自己)に対しては攻撃・排除する「免疫」システムが備わっています。これは本来私たちの体を守るためのしくみです。

ところが、この免疫システムが過剰に反応して、さまざまな症状を引き起こし、悪い影響を及ぼすことがあります。たとえば、体に入っても問題のない花粉(非自己)に過剰に反応して、くしゃみや鼻水で花粉を排除しようとするのが「花粉症」。食物アレルギーは、本来栄養となるはずの食物たんぱくが体に入ってくると、異物とみなして過剰にアレルギー症状を引き起こす状態なのです。

アレルギー疾患の発症には遺伝だけでなく生活環境も関係

アレルギーを引き起こしやすい体質を「アトピー素因」といいます。アトピー素因をもっている人が、アレルゲン(アレルギーの原因となる物質)となる食物を食べたり、皮膚に接触したりすると、体内でアレルギーを引き起こすもとになる「IgE(アイジーイー)」という抗体がつくられます。

免疫反応で異物と判断されたアレルゲンを排除するため、IgE抗体が体内に張り巡らされます。これが、アレルギー体質の始まり。再びアレルゲンとなる物質が体内に入ると、IgE抗体とアレルゲンが結合し、ヒスタミンやロイコトリエンなどの化学伝達物質が過剰に放出された結果、じんましん、くしゃみ、息が苦しいなどのアレルギー症状が起こります。

アトピー素因はある程度遺伝するといわれ、アトピー素因を持つ人は、気管支喘息、アレルギー性鼻炎、花粉症、アトピー性皮膚炎などを生じやすく、食物アレルギーにもなりやすい傾向があります。しかし、両親がアトピー素因を持っていなくても子どもが発症する場合があり、また、アトピー素因を持っていても必ず発症するわけでもありません。アレルギー疾患の発症は、遺伝だけでなく食習慣や生活環境も関係しているのです。

アレルギー症状はさまざま。ひどくなると全身症状を起こすことも

食物アレルギーの症状はさまざま。皮膚が赤くなったり、じんましんや湿疹が出て、強いかゆみを伴うケースが多くみられます。あるいは、目、鼻、口などの粘膜の炎症、咳や喘息といった呼吸器に関わる症状、消化器、神経、循環器に現れることも。また、アレルゲンとなる食物を食べたり、皮膚に接触したりした直後に起こる急激なアレルギー症状を「即時型症状」といい、高度に症状が広がった場合を「アナフィラキシー」といいます。

アナフィラキシーはひどくなると、血圧が低下し、ぐったりする、意識がぼーっとなるなど全身症状を起こし、ショック状態に陥ってしまうこともあります。

食物アレルギーは、1歳未満の乳児で最も多く発症しますが、成人になって突然発症するケースも少なくありません。年齢により症状が異なるかたちで現れるのも特徴。近年では、さまざまな食品にアレルギーが認められるようになってきました。「アレルギー体質ではないから大丈夫」という人も、子どもや家族のため、また社会の一員として食物アレルギーについての理解を深めておきたいもの。次回は、症状の出方で違う食物アレルギーの「タイプ」とその特徴をご紹介します。

出典元:https://kurashinohon.jp/1060.html

柴田瑠美子(しばた・るみこ)

医学博士。日本アレルギー学会指導医。国立病院機構福岡病院小児科非常勤医師。中村学園大学栄養科学部客員教授。昭和46年九州大学医学部卒。九州大学医学部講師、国立病院機構福岡病院小児科医長を経て現職。早くから食物アレルギーの専門医として研究、治療に積極的に取り組む。平成2年より同病院にて食物アレルギーの親と子のための「食物アレルギー教室」を開催。食物アレルギーの理解を深める抗議や除去食の指導などで患者の家族の不安に寄り添い、多くの食物アレルギー児の寛解、耐性化をサポート。『食物アレルギー診療ガイドライン2005、2012』、『食物アレルギーによるアナフィラキシー学校対応マニュアル』に政策委員として関わる。著書(共著)に『ホップ・ステップ!食物アレルギー教室』(南江堂)など。

『国立病院機構の食物アレルギー教室』のほか、料理、美容・健康、ファッション情報など講談社くらしの本からの記事はこちらからも読むことができます。

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