昔から、メイクに自信がありませんでした。気合を入れてメイクすると「何か今日変じゃない?」と言われてやる気をなくすことの繰り返し。「化粧しないほうが綺麗じゃない?」とすら言われたことがあります。
どうもうまい加減が分からなくて濃くなってしまう。だからいつも眉毛描いて、マスカラ塗って、チーク塗って、口紅塗って……という過程でつねに「これで良いのかな?」と不安を感じながらメイクしています。
初めてお化粧をしたのは大学生のとき。覚えているのは、まぶたをビューラーで挟んでしまいそうで怖かったこと。「こんな面倒なことを世の中の女性は毎朝やっているのか」と衝撃でした。それから時が経って、下手なりにも慣れてメイクをしていて大きな失敗をすることはなくなりましたが、ハッキリ言って毎日同じようなメイクしかしていません。
これって、おそらく私だけじゃないハズです。“女として生まれたら化粧をすべき”。こんなプレシャーのもとに、早ければ中高生から、遅くても社会人になったときにはメイクで作った顔で社会に出ることを望まれるわけですが、仕事と違ってメイクって誰かに習う機会は滅多にありません。みんな、我流でなんとなく仕上げているだけで「私、お化粧得意なの」という人って割合としてはそんなに多くないと感じます。
美容雑誌がたくさん出ていて、メイク動画をアップするYouTuberもたくさんいる。情報を入手する手段はたくさんあるけれど、自分に合ったメイクを見つけるのは難しいもの。可愛くなりたい気持ちはあるのですが、方法が分からないまま年を重ねてきてしまいました。
「私にはこの色しか似合わない」
「顔立ちが違うから、このテクニックは使えない」
そんなふうに自分で自分のメイクに制限をかけている人と出会った時、いつも思うことがあります。固定観念を解放し、単純に「もっとメイクを楽しんでほしい!」と。
『メイクのヒント 毎日可愛くなれる』に書いてあった一節は、まるで自分のことをズバッと言い当てられたのかとドキッとしてしまいました。女性誌等で活躍される千吉良恵子さんのメイク本です。
この本では「シチュエーションごとのメイク」「アイテムごとの使い方」「作りたい印象別のメイク」「ファッションに合わせたメイク」という4章構成に加え、千吉良恵子さんの愛用コスメなどが紹介されています。
雑誌などで「このメイクいいな」と思って手順を見ても、自分に再現できる気がしないのは技術的に難しそうだから。こだわったメイク道具や腕がないと再現できないのでは?という恐れから試してみようと腰が上がらないのです。でもこの本は「ちょっとやってみようかな」と思えました。
素晴らしいのは、メイクの手順ではなく「概念」を描いてくれていること。例えば、「昼デート」「夜デート」「おうちデート」「合コン」などシチュエーションごとのメイクの使い分けがとても分かりやすいのです。
「夜デート」の場合は、
狙うのは“彼だけに見せている”と思わせる、甘ったれた顔。男性は自分しか知らない表情に触れるとキュンとするものだから、そのムードをタレ目風の目もとで。まぶたをほんのり高揚させ、ちょっと酔ったような隙のある可愛さを漂わせれば、今夜のデートは大成功!
ポイントは、下まぶたにコーラルの赤みをまとわせること。上から照明が当たったときに影になるようにシャドウをのせるなどのテクニックは、目からウロコでした。そんな視点でメイクを考えたことがなかった!
「合コン」の場合なら
異性へのアプローチは必要だけど、同席の女子にあざといと思われるのはNGだから、メイクは知性を意識してちょっとクールな美人顔に。笑うとギャップで可愛く。酔ってくると血色感が加わって、帰宅する頃いちばん男性好みの顔になるのも、また会いたくさせる計算!
女性を敵に回さないためには「知性」を全面に出したメイクがポイント。しかも、目もとに透明感を出してくれるオリーブ色のパウダーを使ってクールに仕上げるのがいいそうです。
他にも「プレゼン」「出張」「すっぴん風に見せたい」など、仕事も恋も頑張りたい女性のいろいろなシチュエーションに応じたメイクが紹介されています。これからの時季、気になる乾燥肌も「潤い不足の肌は光をうまく反射できない肌」なので上下まぶたのツヤとインサイドラインの赤色で潤い感を出すなどと考え方から対処法がしっかり載っていて、頭に残りやすいのが嬉しいんです。
メイクのイメージが湧かない日は、目をつぶってパッと開いたページの顔を試してみるのも手。
メイクに秘められたメッセージを読み解くような、占いみたいな使い方って、ワクワクしませんか?
ついついメイクがワンパターンになりがちな人こそ、こんな使い方もあるんだと気づかせてくれる本です。QRコードで飛べる動画でチークの入れ方をチェックできるので、スマホを観ながら試せるというのも嬉しいポイント。「メイクってどうも自信がなくて」という人ほど手にとってほしい1冊です。
レビュアー
20代のころは探偵業と飲食業に従事し、男女問題を見続けてきました。現在は女性向け媒体を中心に恋愛コラム、男性向け媒体では車のコラム、ワインの話などを書いています。ソムリエ資格持ちでお酒全般大好きなのですが、花粉症に備えて減酒&白砂糖抜き生活実践中。