流行りのメイクが、イケてない
せっかく化粧をするのなら鏡の前で、「今日の私、イケてる」と思うそういう化粧がしたい。そう念じて毎朝化粧をしている。でも出力のブレがひどい。友人の結婚式の朝に気合いを入れて化粧をすれば失敗するし、ネットで聞きかじった「流行りのメイク」をためせば珍妙な顔になる。そんなに御し難い顔面なのか私……。これが続いて10数年。
この悩みにスパッと答えをくれたのが長井かおりの『テクニックさえ身につければ、「キレイ」はもっと引き出せる』だ。そういえばちゃんとメイクを誰かに教えてもらったことはなかった。私は心の中で長井師匠とお呼びしている。
師匠は最初にこうおっしゃった
まずはベーシックなメイクテクニックをきっちりと身につけて、メイクの基礎力をどんどん向上させてください。いくら、「今年はパステルカラーがトレンド。腫れぼったくは見えません!」と言われても基礎力がないまま挑戦すると、失敗する確率は跳ね上がります。
これだよ! たとえばバレエだって最初のうちはトウシューズすら履(は)けないし、筋トレもメソッドを覚えないと徒労の連続だ。でも、がんばって覚えた基礎たちは、どれも一生ものだ。これだ。メイクの基礎、ほしい!
この本では、彼女が提唱する「アプリコットメイク」という鉄板かつ基本のハウツーが丁寧に解説されている。
「アプリコットメイク」=誰にでも似合う「いい女の化粧」
著者はもともと化粧品メーカーの人気ビューティーアドバイザー(以下、BA)で、その後ヘア&メイクアップアーティストに転身した。その経歴から、プロの撮影用メイクだけではなく、私のような「一般の女性」に施すメイクメソッドで絶大な支持を得ている。そんな彼女がどんな女性をも“自分史上最高”を作り出せるという「アプリコットメイク」は、BA時代に大勢の女性と向かい合い確立させたメイクメソッドである。顔・形を問わず、誰にでも、自分の手で毎朝できるのだ。まずはこのページを見ていただきたい。
この人たちの化粧はみんな同じ「アプリコットメイク」。同じなのに、それぞれに個性があり、みんな垢抜けた「いい女」の顔になっている。この全行程が1冊に収まっている。
「寝坊してしまったときのテンションでやりましょう」
長井師匠はスパルタというか「手を抜かないところは絶対に手を抜かない」人だ。まず、洗顔後の1秒目から即「仕込み」が始まる。はやっ!とはいえ、「すみずみまで丁寧に時間をかける」についてはNOだ。なんなら「寝坊したときこそが、長井メイクの本領発揮」とおっしゃる。つまり優先順位がはっきりしているのだ。集中するのは下記の行程。
・基礎化粧品
ここはメイクを支える土台。化粧水や美容液をつけるタイミングや量が具体的な写真付きで記されている。まるでお菓子のレシピだ。
・ベースメイク(下地、ファンデーション、クリームチーク、粉)
この工程で長井メイク最大といってもいいくらいの渾身の力がこもる。選ぶべきファンデーションの質感、量(めちゃ多い)、塗るスポンジの角度、すべてに細かい解説がある。
言われた通りにやると頬骨のあたりは滑らかでツヤツヤ、頬の血色も良くなり、鼻や額はサラサラ。そういう顔が手に入る。
・アイメイク(アイシャドウ、アイラッシュビューラー、アイライン)
ここも丁寧に仕込む。とくに印象的なのがアイラッシュビューラーでまつ毛を持ち上げるとき。ダイナミックだ。まぶたがひっくり返る勢いでまつ毛を上げる。
手を抜き、執着を捨てるところ
手を抜くパーツについても面白い。「ここで気合いを入れても無駄」「執着を捨てましょう」と言い切っておられる。下記のパーツです。
・マスカラ
「手を抜け」というより「仕込み」が重要なのだ。そういえばマスカラって気合い入りがち……。気合いを入れた割に夕方にはシナシナになって鏡の前でげんなりするのは「仕込み」の問題だったようだ。
・アイブロウ
ここも痛快だ。
長井メイクではアイメイクを終わらせてから眉を描きます。いつものメイクと順番が逆……と言う方も多いと思いますが、眉を後から描くからこそ、全体的なバランスが取りやすくなります。
私はまさに眉毛の優先度を上げて化粧をしていた。でも、確かに最後にちょちょっと整える方が馴染(なじ)む……。
こういう風にすべての行程に優先度と意味がある。「なんとなく」は一切ない。
リップで遊ぼう
基礎は裏切らない。ずっと味方だ。でも基礎ばかりだと飽きてしまう。そこで初心者でも「遊べる」パーツとしてリップの項が最後にあり、どれもぜんぶ可愛い。ああ、化粧楽しい……!
現実的な初期投資
各工程でピックアップされているコスメは価格帯が幅広いので揃えやすい。学生でも気軽に買える数百円のコスメから景気良く1万円越えのものまで挙げられている。
毎日の化粧は義務じゃないし、自分を元気づけるためのもの。「整形級のメイク!」じゃなくていいから、背伸びせず自分を好きになりたい。「アプリコットメイク」はそんな化粧の基本レシピだ。がんばって一度覚えておけば、いつか流行りのメイクだって自分のものにできるはずだ。「楽しく自分であるため」の初期投資の1つとしてぜひ試してほしい。
レビュアー
元ゲームプランナーのライター。旅行とランジェリーとaiboを最優先に生活しています。