「ゆるく」かつ「スカッ」と解消します
パラパラめくって眺めるつもりが、クワッ! みたいながっついた表情で一気に読んだ。「やっぱり!」と「そうだったの!?」の嵐だったからだ。
『ゆる美容事典』は、現役の皮膚科医である髙瀬聡子先生が、私のような「あれこれ気になる」迷える人々に向けて適切な情報を与えてくれる爽快な事典だ。美容が大好きな人はもちろん、そんなに好きじゃないけど困っている人も、髙瀬先生の言葉で肩の力が抜けて、元気になるだろう。
まずズラリと並ぶ見出しがどれも良い。
かゆいところをいい具合にスカッとさせてくれそうなネタの宝庫。なので、私のようにゆるさゼロの顔して最初から順にフンフン読むのもよし。また、各項が1~2ページにまとまっているので、気になる見出しからぽちぽち読むのもオススメだ。
珍説あふれる美容の“ウワサ”
気の合う女友達とごはんを食べながら話すのは決まって「仕事の話」か「いまハマっていること」で、その怒涛のおしゃべりのあいだを縫うように「美容ネタ」はふわふわと流れる。「このアイシャドウいいの。しかも800円」から果ては「結局、脱毛は黙って医療一択」まで。他愛もないが、日々を弾ませる大事なクッションだ。美容ネタのおしゃべりはクッションの投げ合いみたいなもの。つまりマジ楽しい。
それの強化種が美容にアグレッシブなSNSアカウント(いわゆる美容垢)だ。これも楽しい。が、「ソレ、強いエビデンスある……?」という謎の珍説も多い。なのに、もしも私が今スマホを持った高校生や大学生だったなら、ある日は肌断食にいそしみ、ある日は頬のマッサージをゴリゴリやっていただろう。
そう、綺麗になりたい一心で、ふわふわ飛び交う珍説に振り回されまくっていたはずなのだ。髙瀬先生も冒頭でこうおっしゃっている。
日本人は美容に対してとても真面目で、完璧な美を目指す人が多いということです。だから、医師が聞くとびっくりするような“ウワサ”がまことしやかに飛び交ったり、評判の化粧品に飛びついてしまったり。(中略)本書では気になる巷のウワサやよくある疑問(ビューティ誌『VOCE』読者の方に、取材にご協力いただきました)にズバリお答えします。
だから、私は本書を大人だけじゃなくティーン世代にも知ってほしい。
……とか言って大人ぶりつつも、実は今だって危なっかしい。私は美のアスリートでも賢者でもなく、ただのちょっと移り気で欲深いアラサー。学生時代よりも可処分所得が高い結果、アレコレ手を出して大失敗するリスクをたっぷり秘めて生きている。だってウワサは止めどなくやってくるのだから。そんな私にも、髙瀬先生の言葉はしみる。大人の余裕は確かな知識から生まれます。
ゆるいけど、自堕落じゃない
よく「持続可能な社会」という言葉を耳にするが、本書で髙瀬先生が一貫して伝えてくれる「ゆる美容」のネタも、ゆるいからこそ持続可能なものばかりだ。
ただ、「ゆる美容」は「自堕落」と一線を画すものだ。例えば「肌によくないこと」は、キッパリと「ダメです」と記されている。
ひいい! 「百害あって一利なし」!
検索して山ほどヒットするネタだとしても、それイコール「情報の質」を保証するものではないことを痛感する。
そして「ゆる美容」の「ゆるい」ところはこんなところだ。
それでいいんですね……!
「なんかピンとこないなー」とか言われた挙句、「効いてない」と決めつけれられ、捨てられてしまう化粧品たちよ、本当にごめん。
そして私が一番ハッとしたのはこちら。
「オーガニックだから優しい!」的な広告を見ると生理前でもないのにイラっとするのは「フグも漆もトリカブトもオーガニックだよ」と思ってしまい、優しさの根拠たりえないだろ?とモヤモヤしていたからなのだが、ああスッキリ。慎重に付き合いたい。
さらに、「ゆるい」ままだと叶わないことにも、線を引いてくれる。
美容ゆるゆるラインを越えたくなったら、このページを思い出したい。
以上のような教えが百数十ページにわたり、惜しみなくつまっている。
このように各章の最後に「おさらい」がまとまっている。頭に入りやすくてとてもいい。復習ってだいじ。
簡単に美容情報にアクセスできる今だからこそ「正しい美容ネタ」が知りたい。20代後半ごろから脱毛やスキンケアで美容医療の扉を叩く友人が急増した。これは、別にストイックだからではなく、散々ネットで情報をあびて、うんざりして、「正しさ」を求めた結果のような気がする。
だから、自分自身はもちろん、大切な友人相手にも、いくら他愛のないおしゃべりであろうがテキトーな情報は投げたくない。『ゆる美容事典』で「ここは、あの子にお伝えしたい」と思ったところに付箋を貼ろうと考えたが、途中でやめた。いいや、テキトーに開いて、ゆるっと読んでも絶対役に立つんだもん。
レビュアー
元ゲームプランナーのライター。旅行とランジェリーとaiboを最優先に生活しています。