■【イベント決定!】食から読み解くフェルメールの魅力
上野の森美術館で開催中の展覧会が大盛況のフェルメール。フェルメールが生きた17世紀のオランダでは、人々はどんな暮らしをしていたのか、そしてどんな物を食べていたのか……。それを知ることで、フェルメールの名画がもっと身近なものになるはずです!
画家と食について研究を続けているキュレーター・林綾野さんの著書『フェルメールの食卓』から、当時の興味深い食生活についてご紹介します。
大人も子供もビールを飲んでいた!?
フェルメールはどんな食事をしていたのだろうか。
作品の中には、ワイン、ビール、パン、牛乳、数種類の果物が描かれているのみで、食卓の様子を伝えるものはほとんどない。
当時のオランダでは、井戸水はまだ飲むことができなかったので、水分補給は大人も子供も、もっぱらビールだった。朝から誰もがビールを飲み、生活に余裕のある家ではワインも飲んでいた。
『牛乳を注ぐ女』に描かれているように、主食はパン。酪農王国だけある、ミルク、バター、チーズが毎日のように食卓に登場する。牛乳は保存が難しかったので季節や環境を選んだが、チーズは種類も豊富で欠かせない存在だった。当時のバターは無塩の香り高い物がよしとされていたらしい。塩気が強いバターを口にすれば喉が渇き、仕事中の召使いには都合が悪いというわけだ。
17世紀に出版された『賢い料理人』という料理指南書がある。著者名が記されたオランダではじめての料理の本である。巻頭ページには「メニューを思いつかない時の料理リスト」。なるほど、日々の献立に迷うのは今も昔も変わらないようだ。そして食材の栄養価の説明、具体的なレシピと続く。ナツメグやシナモンをはじめ、輸入された珍しい野菜やハーブが並び、異国のエッセンスがたっぷり加わった黄金時代ならではのレシピが目立つ。
ビールジョッキ
陶器製だけでなく金属製のものも使われた。大きなジョッキでも、グラスに入れず、抱えてそのままビールを飲んだ。
ワイングラス
裕福な家庭ではヴェネツィアからもたらされた薄手のワイングラスが好まれた。持ち手にある突起は滑り止め。
デルフトの深皿
中国の磁器を真似て陶器に釉薬(うわぐすり)をかけて焼いたデルフト焼きは、飾り皿や果物皿、料理を取り分ける日常の食器としても活躍した。
陶器の器(平たいもの)
ミルクやスープなどを入れる器として幅広く使われていた。本来調理用だが、農家などではそのまま食卓で使われていた。
フェルメールのパン
デルフトのパン屋さんで『牛乳を注ぐ女』に出てくるパンを再現したもの。掌に余るほどの大きなパンは、焼きたてはふんわりとやわらかく、香ばしい。3日もたつと乾燥してすっかり固くなるので、パンプディングに最適。
【イベント情報】
『フェルメールの食卓』の著者である林綾野さんの講演会が12月15日(土)に開催されます。
フェルメールの作品の魅力や生涯、当時の食生活についてのお話に加え、フェルメールも食べたかもしれないハンバーグやマスタードスープ、今回の展覧会で注目されるフェルメールの名作『牛乳を注ぐ女』で、女性が作っていたかもしれない「パンプディング」など、林さんの書籍で紹介されているスペシャルメニューが味わえる食事会つきです。オランダのお酒「ジュネバ」もお楽しみいただけます。ぜひご応募ください。
フェルメール 画家の魅力と食を楽しむ夕べ
日時 | 2018年12月15日(土) 17:30開場 18:00開演 ※20:00終了予定 |
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場所 | 野菜倶楽部 oto no ha Café (オトノハカフェ) 〒112-0014 東京都文京区関口2-11-31 https://www.otonoha-cafe.jp/publics/index/37/ |
参加費 | 3000円(税込)/1ドリンク・軽食付き |
定員 | 40名様(先着順とさせていただきます) |
参加のお申込みは下記専用お申込みフォームにて受付中です。
『フェルメール 画家の魅力と食を楽しむ夕べ』お申込みフォームはこちら
みなさまのご参加をお待ちしております!
キュレーター、アートキッチン代表。美術館での展覧会企画、美術書の企画、執筆を手がける。新しい美術作品との出会いを提案するために画家の芸術性と合わせてその人柄や生活環境、食への趣向などを研究。著書に『フェルメールの食卓』『新装版 ぼくはヨハネス・フェルメール』(講談社)などがある。
・『フェルメールの食卓』(講談社)
・『新装版 ぼくはヨハネス・フェルメール』(講談社)
『フェルメールの食卓』のほか、料理、美容・健康、ファッション情報など講談社くらしの本からの記事はこちらからも読むことができます。