■今年もやってきましたヌーヴォーの季節! ボージョレ・ヌーヴォー、50年の歴史
毎年、ボージョレ・ヌーヴォーの解禁日「11月の第3木曜日」に発売される本があります。『世界の名酒事典』(2019年版・講談社)はウイスキーからワインまでを網羅した日本で唯一のお酒の総合事典。今年で40年続いています。この『世界の名酒事典』の編集に長年携わってきた担当編集者の石橋尚樹さんに、1967年から続く「ボージョレ・ヌーヴォーの50年史」を教えていただきました。
ブルゴーニュ地方の“地酒”から 世界のヌーヴォーへ
ボージョレ・ヌーヴォーはフランス、ブルゴーニュ地方のボージョレ地区で造られるワインの新酒。今では、すっかり晩秋の風物詩として定着しましたが、そもそもは地元で飲まれる素朴な「地酒」でした。
それが、1967年にフランス政府が11月15日を解禁日としたことで(後に11月の第3木曜日に変更)、全国規模に拡大します。パリの居酒屋には「ボージョレ・ヌーヴォー入荷!」の看板が出され、お祭り騒ぎに。そのお祭り気分は、70年代に入ると世界中に広がり、もちろん日本にも伝播します。80年代後半には、バスを仕立てて成田空港まで行き、そこでヌーヴォーを開けるというフィーバーぶりでした。
そのときの宣伝コピーは「世界で一番早く飲める!」というもの。ヌーヴォーの解禁は、11月第3木曜日の午前0時ですから、時差の関係で日本ではフランスより8時間早く飲めるわけです。ですがこれは誇大広告。日付変更線は太平洋の真ん中にありますので、ニュージーランドのほうが早く飲めますから(笑)。
飲みやすさの秘密は、その醸造法。 “炭酸ガス浸漬法”って?
何故そこまでボージョレ・ヌーヴォーは、人気が出たのか? 1980年代、ワインはしだいに日本人の生活の中に入ってきていました。でも主流は赤ワインではなく、甘みのある白やロゼ。赤ワインの渋みが、日本人は苦手だったのです。
ところがボージョレ・ヌーヴォーは、渋みや酸味がおさえられて「まるでぶどうジュースみたい」に飲めました。これはボージョレ特有の醸造法「マセラシオン・カルボニック(炭酸ガス浸漬法)」によるものです。密閉タンクの上からぶどうを次々に投入すると、下になったぶどうはぶどう自身の重みで潰され、発酵が始まります。そのとき炭酸ガスが発生するのですが、その炭酸ガスと共に発酵が進むことで渋みや酸味の少ない赤ワインができるのです。ボージョレで日本人は赤ワインに慣れ、90年代の「チリカベ」ブームを準備することになりました。
「ヌーヴォー」はボージョレだけではない。 10月30日も11月3日も“解禁日”
当時飲まれていたのはもっぱら、普通のボージョレ・ヌーヴォーでした。ボージョレにはいくつか種類があります。ボージョレ地区はブルゴーニュ地方南部の広大なワイン産地。ボージョレ地区の北部の39の村で造られるワインは「ボージョレ・ヴィラージュ」という名前を名乗ることができます。これは普通のボージョレより格上のもの。近年はヌーヴォーも、「ヴィラージュもの」が増えました。
さらにそれよりも格上なのがフルーリ、ムーラン・ア・ヴァン、モルゴンなどの「村名もの」のボージョレ。これにはヌーヴォーはありませんが、試してみる価値のあるとてもチャーミングなワインです。
じつは「ヌーヴォー」を造っているのは、フランスだけではありません。イタリアにも日本にもあるのです。イタリアワインの新酒は「ヴィノ・ノヴェッロ」。その解禁日はボージョレより2週間ほど早く、10月30日。日本ワインの中心産地、山梨県の新酒は11月3日が解禁日。この日は東京・日比谷公園で賑やかに「山梨ヌーボーまつり」が開かれます。 お祭りといえば、ボジョレワイン委員会の主催で11月15日(木)~11月17日(土)の3日間「ネオボジョMATSURI 2018」が開催されます。ヌーヴォーがお得価格で楽しめるほか、ネオ・バブル感を全身で感じるフォトスポットや、DJ Timeなどもあり、お祭り気分がさらに盛り上がりそうですね。
イベント情報
開催期間 | 2018年11/15(木)~11/17(土)12:00~21:00 |
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DJ Time | 17:00~21:00 |
開催場所 | サナギ 新宿 東京都新宿区新宿三丁目35番6号 |
主催 | ボジョレワイン委員会(Inter Beaujolais) |
参加費 | 入場料無料 |
公式サイト | https://beaujolaisnouveaujp2018.com/ |