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2018.07.05

レビュー

『つながる脳科学』うつ病・アルツハイマー病の治療に応用される最前線!

本書は、1997年に理化学研究所に設置された脳科学総合研究センター(BSI)の設立20周年にあたって、9人の研究者たちが脳研究の最前線を、一般向けにわかりやすく解説した内容になっている。

脳は他の臓器と違ってニューロン(神経細胞)によって働きが異なるため、1つ1つの働きを理解できるようになるには困難を極める。よって、医学や生物学にとどまらず、物理学・化学・数学などの自然科学から人文・社会科学などに及ぶあらゆる学問を総動員して研究を進めなければならない。脳科学の中核的研究施設としてBSIが設立された背景もそこにある。近年になって生きている動物の脳を細胞レベルで観察することが実現し、脳の中で起こっているさまざまなニューロンの働きが徐々に解明されてきた。

例えば、記憶については脳の海馬が大きく関係しているという。マウスを使った実験では、光を感知する特殊なタンパク質を用いた新技術によってニューロンの働きを操作し、マウスの脳内に「経験したことのない記憶」を作ることに成功した。さらには、こうした研究成果を応用することで、うつやアルツハイマー病などの脳疾患の治療に脳科学がどこまで貢献できるのかについても探究が続いている。

本書にはさまざまな脳研究の手法が多彩な図やイラストとともに示され、脳科学に詳しくなくても理解しやすい構成になっている。それぞれの研究者たちの個性が色濃く表れており、本書を読むことで脳科学がより身近に感じられ、知的興奮を覚えることだろう。

目次

  1. 第1章 記憶をつなげる脳
  2. 第2章 時間と空間のつながり
  3. 第3章 ニューロンをつなぐ情報伝達
  4. 第4章 外界とつながる脳
  5. 第5章 数理モデルでつなげる脳の仕組み
  6. 第6章 脳と感情をつなげる神経回路
  7. 第7章 最新技術でつながる脳
  8. 第8章 脳の病の治療につなげる
  9. 第9章 親子のつながりをつくる脳

編者紹介:理化学研究所 脳科学総合研究センター

1997年、理研和光地区に設置された脳科学研究機関。通称「BSI」(Brain Science Institute)。創立以来、国内外から研究者が結集し、世界をリードする脳研究の拠点となっている。工学、計算理論、心理学まで含めた学際的かつ融合的学問分野を背景に、研究対象は、脳内の分子構造と神経回路の解明、認知・記憶・学習のしくみの理解、脳回路の数学的理解、脳疾患の発症機序の解明等まで幅広くカバー。「心」を生み出す「脳」の解明を目指し、学際的かつ融合的な研究を推し進めている。

レビュアー

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