人は、物語を紡ぐ生き物である。その能力は、太古から、神話や民話を通して、危険や教訓を他者に伝えるためにも使われてきた。また、リサーチによれば、健康な精神状態の人でも、選択や決断などに際して驚くほどたくさんの物語を作話しているのだという。
本書が着目するのはこの能力である。失敗や挫折を経験したとき、脳内で安心や納得を得るためにも、物語をつくる能力は発揮される。たとえば、仕事がうまくいかないとき、たまたま不運だっただけかもしれないのに、自分の能力が足りないせいだと急いで辻褄を合わせてしまう。込み入った事情が薄められた、単純でわかりやすいストーリーを脳が好むためだ。
このとき、辻褄合わせのストーリーに身をゆだねず、自分の感情を見つめ、なぜそうしたストーリーを選択してしまったのかを突き詰めれば、新しい結末を得るために何をすればいいかが見えてくる。それこそが、著者が事例研究の末にたどりついた、「逆境から自分を立て直す」プロセスだ。
なんとなく立ち直るのではなく、「立て直す」。つまり本書は「失敗は成功のもと」のプロセスを、理論として提示しているといえる。つまずいて転んだら痛い。心身も傷つく。ただ、あきらめずに気持ちを立て直して進んでいけば、成功だけではなく、豊かな人間性や感性、より幸せな人生を手に入れることができる。本書から得られる学びを、多くの方に活かしていただきたい。
目次
- イントロダクション――果敢に挑み続ける価値
- 1章 「立て直す力」10の法則
- 2章 立て直すプロセスを理解する
- 3章 最良のストーリーをつくる
- 4章 自分の感情を自覚する
- 5章 ストーリーを整理整頓する
- 6章 境界線を引く方法
- 7章 傷つく勇気をもつ
- 8章 助けを求める勇気をもつ
- 9章 倒れた時の立て直し方
- 10章 「恥ずかしい自分」を受け入れる
- 11章 立て直す力を身につける
著者紹介:ブレネー・ブラウン
ヒューストン大学ソーシャルワーク大学院研究教授。その画期的な研究は、公共放送サービスPBSと公共ラジオ放送NPRで紹介され、TEDトーク「傷つく心の力」(2010年)で知られる。『ニューヨーク・タイムズ』紙No.1ベストセラーに輝いた著書多数。邦訳に、『本当の勇気は「弱さ」を認めること』(サンマーク出版)、『「ネガティブな感情」の魔法:「悩み」や「不安」を希望に変える10の方法』(三笠書房)などがある。
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レビュアー:熊倉 沙希子
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