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2017.09.18

レビュー

ドミニック・ローホー提唱『シンプルリスト』を作って、理想の断捨離を!

大ヒットしているTVドラマ『やすらぎの郷』の後半で「断捨離」が1つのモチーフになっていた話がありました。断捨離はやましたひでこさんが著書でとりあげ、大普及しました。(ちなみに断捨離の商標登録をやましたさんはされています)

日本人には「もったいない」という意識が強くあります。これはこれで間違っているわけではありませんが、「もったいない」が強くなりすぎると、ものを大事にすることからものに執着し縛られるようになってしまいます。

その不自由さ(束縛!)から解放されるために主唱されたのが「断捨離」です。これはヨガの「断行(だんぎょう)」、「捨行(しゃぎょう)」、「離行(りぎょう)」からきているそうです。

断:入ってくるいらない物を断つ。
捨:家にずっとあるいらない物を捨てる。
離:物への執着から離れる。
(一部ウィキペディアより)

ものはただの物質ではありません。そこには所有者の歴史や記憶、さまざまな思いが憑いているのです。(『やすらぎの郷』でも登場人物が断捨離はものがもたらす思いを捨て、そこから自由になることことだというようなことをいっていました)

大事だ、大切だと思っていたことが、いつの間にか所有者の生活や行動を縛ることになってしまう。なぜそうなってしまうのでしょうか。自分の思いへのこだわりなどがあるからでしょう。

だとするなら、まず断捨離しなければならないのは自分の意識や行動なのかもしれません。誤解をおそれずにいえば、この本は自分がとらわれ、実は自分を不自由にしている“自分の思い”に気づかせるものであり、自己にまつわる意識と、そこにある固定観念の断捨離本ではないかと思います。

この本では「リスト」というものを提唱しています。リスト化することで自分の思いや感情や執着心を客観視できるようになります。つまり、リストは「心の呪縛を解き」、本当の自分の姿を映し出してくれる「魔法の道具」なのです。

リストする項目はなんら特別なものではありません。

・絶対にしたくないことリスト
・心地よさを感じるリスト
・恋人との関係を見つめるリスト
・かけがえのない瞬間のリスト
・時間の使い方や大切にしたい時間に関するリスト

この本では上記のようなリスト案の内容が50以上にわたって推奨されています。まずはそのリスト案に沿って、自分のリストをつくってみてはどうでしょうか。自分がなんと多くのものにとらわれているのかと驚かれると思います。

自分が持っている固定観念を洗い出すことで見つかるのは「本当の自分」であり、「心から幸せを感じる」ことができるものは何なのかということです。今まで当然と思っていたこと、あるいは自分の考えや感覚と思っていたことを洗い出し、本当の自分の感覚、自分らしさをつかむことです。

リストの中に「かけがえのない瞬間のリスト」というものがあります。ここには5つのリスト案が載っています。

1.理想的な一日とはどんな一日か
2.日常にある楽しみの時間(ショッピング、パーティー、瞑想など)
3.単調な日常を忘れさせてくれる楽しみ
4.外出予定(映画、同窓会など)
5.休暇中にすることの予定(旅行など)

さらに続けて「小さな幸せが見つかるリスト」が載っています。

1.季節ごとの幸せ
2.一日のなかで感じる幸せ
3.訪れる国ごとに味わう幸せ
4.大切な人と一緒に味わう幸せ
5.ひとりで味わう幸せ
6.お気に入りの場所から生まれる幸せ

この2つのリストは著者の考える「幸せ観」を象徴しています。といってこれをささやかな幸せと勘違いしてはいけません。なぜなら「かけがえのない瞬間」も「小さな幸せ」も、これらのことを感受するには自分の感覚を磨く必要があるからです。そして感受する能力を高める「五感を磨くリスト」という実践編!も収められています。

この本のなかに『にんじん』や『博物誌』で知られた小説家ジュール・ルナールの言葉が引用されてます。

──幸福とは、幸せのふりをすることではなく、幸せでいることなのだ。──

「かけがえのない瞬間」と「小さな幸せ」の積み重ねこそが幸せにいたる道なのではないでしょうか。

この道を歩むには余計な思いに惑わされてはなりません。この本と自分で作ったリストを手にして、自分を“整える”ことが肝要です。

興味深いリストが2つありました。1つはユーモアのセンスを磨くための「笑いのリスト」で、もう1つは正反対のことを見つめる「対極リスト」です。対極リストの案は次のようなものです。

1.人生で好きなことベスト100、嫌いなことワースト100
2.最高の旅行の思い出、最悪の旅行の記憶
3.自分を好きな人と嫌いな人、自分が好きな人と嫌いな人
4.今自分を楽しませていること、うんざりさせていること

本当の自分を見出し手放さずに生きること、それが「人生という1冊の本の著者になる」ことであり、幸せへの道なのです。自分の頭のなかにある先入観、思い、欲望などを「断捨離」することからはじめましょう。そのために必要にサジェスチョンがあふれている好著です。すべての人のポケットにこの1冊を。

ゆたかな人生が始まる シンプルリスト

著 : ドミニック・ローホー
訳 : 笹根 由恵

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レビュアー

野中幸宏

編集者とデザイナーによる書籍レビュー・ユニット。日々喫茶店で珈琲啜りながら、読んだ本の話をしています。政治経済・社会科学から芸能・サブカルチャー、そして勿論小説・マンガまで『何でも見てやろう』(小田実)ならぬ「何でも読んでやろう」の二人です。

note
https://note.mu/nonakayukihiro

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