「人は死ぬまで結婚できる 晩婚時代の幸せのつかみ方」この力強いタイトル。今現在「早く結婚したい」と考えている人が手に取るには少し恥ずかしくなってしまうかもしれません。「私、そこまでして結婚したいと思っていないし」と。
「絶対に結婚したほうがいい」とスパルタ式に教えてくれる本かと思いきや、中身は決してそうではありません。離婚経験があり、自らも晩婚であるという筆者が「別にしてもしなくてもいいけど、結婚したらこんなに楽しいことがあるよ」とダメ出しせずに教えてくれる内容です。
本書のなかで働く女性のための結婚サービス「キャリ婚」を運営する川崎貴子さんという方のインタビューが出てくるのですが、
私の友人に41歳で結婚したキャリア女性がいます。バリバリ仕事して出世していて、40歳になったときに「結婚するのを忘れてた!」と気づいたそうです。そして、1年間の婚活キャンペーンを打ち出しました。彼女のフックは「理系、眼鏡、細マッチョ」。この3つに当てはまる男性を見つけたらすぐに連絡して!と言われました。「合言葉は?」「理系、眼鏡、細マッチョ」と復唱すると、みんなが覚えてしまいます。それからはポケモンGOみたいな状態でした。どこかで「理系、眼鏡、細マッチョ」の独身男性を見つけたらすぐに連絡です。彼女は片っ端から会っていき、本当に1年以内に結婚しました
「優しい人」などという曖昧な条件に比べると、他人から紹介されやすくて上手い条件選びですよね。
本書には、こんな感じで多くの「晩婚さん」の成功例が登場します。悲惨な夫婦生活の失敗例は登場しません。「自分も幸せになれるかも」という夢を見させてくれる“甘口”な内容なので、読んで気分がガクンと下がる心配は不要。
どうやったらその幸せな結婚生活がつかめるのかの具体的な方法も沢山挙げられており、婚活がうまくいっていない友人に対して、そっと優しくアドバイスしてくれるような内容が盛りだくさんです。
■ 晩婚の定義は
本書では、「晩婚」の定義は35歳以上としています。ちなみに45歳以上は「シニア婚」と呼ぶのだとか。また、筆者はある程度の年齢を経てからの結婚を「熟慮婚」という言い方でも表しています。人生経験を経て、自分なりの生活スタイルが確立した大人同士が結婚するのですから、「熟慮婚」という言い方はとてもしっくりきます。
■ 結婚は「需要」と「供給」
晩婚世代が婚活をはじめたとき、ほぼ100%の割合で洗礼を受けるのが「自分の条件に合う人がいない」という絶望感です。でもこの問題、実は理想が高すぎるのではなく婚活の場を間違えているだけなのかもしれません。
これについては、筆者が潮干狩りで得た体験をもとに非常に分かりやすい例が載っています。
最初のうちは大きなあさりを獲ることができなかった。なぜなのか。潮干狩り歴30年のおばちゃんによれば「掘り方」ではなく「掘る場所」を間違えていたのだ。同じように見える海岸でも、良いあさりがたくさんいるところもあれば、まったくいない場所もあるのだ。おばちゃんたちの近くで掘らせてもらうと、丸々と太ったあさりを次々に見つけることができた
婚活もこれと同じで、「頑張る場所」を間違えてしまえばどれだけ努力しても全く出会えない可能性が高くなってしまいます。場所を間違えているだけなのに「私は結婚できないんだ」と自信をなくして悲観的になってしまうのはもったいないですよね。
■晩婚世代の結婚と子供
また、この「晩婚」世代の人が結婚を考えるとき大きなネックになるのは「子供」の問題です。本書では、この問題にも切り込んでいます。
晩婚夫婦にとって最大の壁は「子ども」だ。子どもがほしい場合、男女ともに「できにくくなっている」という事実に直面するのだ。子育て期間を考慮すると「しばらくは夫婦二人きりの新婚生活を楽しんでから」と先送りにすることもできない
20代同士の結婚と違って、晩婚さん同士の結婚にはタイムリミットがつきまといます。ですが、大事なのはお互いが納得できる結論を出すためにきちんと話し合いができることだと思います。
年齢的に「子供は産めないと思うから私はもう結婚できない」と卑屈になってしまっている女性も多いと感じるのですが、「子供がいないほうがいい」と考えている男性も案外世の中には多いし、これは潮干狩りの例のように自分の置かれている環境が悪いだけかもしれません。
100人いれば、100人の幸せの形があるのに、私たちは親からのプレッシャーや、世間体に流されてついつい焦ってしまいます。でも、ちゃんと「熟慮」してから相手を探せば本当に自分にぴったり合う人と出会えるはず。
結婚という形にこだわらなかったとしても“楽しみを分かちあえる、その日あったことを夕飯を食べながら話す相手がいる”というだけでも人生の楽しみって広がりますよね。
この本を読み終えたときには、「ちょっと婚活頑張ってみようかな」と前向きになれる1冊です。
レビュアー
20代のころは探偵業と飲食業に従事し、男女問題を見続けてきました。現在は女性向け媒体を中心に恋愛コラム、男性向け媒体では車のコラム、ワインの話などを書いています。ソムリエ資格持ちでお酒全般大好きなのですが、花粉症に備えて減酒&白砂糖抜き生活実践中。