いつ死んでもいいように遺言書を作らなければと思っていたのですが、完全に自分が甘かったことに気づかされました。死ぬ前にボケがきたり、体が動かなくて入院したりするかもしれないことをすっ飛ばしていたのです。
自分名義の通帳は、たとえ夫婦や子供であっても勝手に下ろせないという当たり前のことをすっかり忘れていました。
こんなときに役立つのが、2000年にスタートした「成年後見制度」。後見人をつけていれば、本人に代わって後見人が貯金を下ろしたり、入院手続きをしたり、介護サービスの契約や老人ホームへの入居契約などを結んだりすることができるというのです。
そもそも成年後見制度は、大きく分けて2つ。
「任意後見制度」……今は判断能力があるが、将来に備えたい人向け。
「法定後見制度」……認知症など判断能力が不十分な人向け。
本人の判断能力に応じて、補助・保佐・後見の3つの
区分がある。
どんな人が後見人に選ばれるのかというと、配偶者や子供など親族が3割ほど。ふさわしい親族がいない場合は、弁護士、司法書士、社会福祉士にお願いすることもできるので安心です。ただしその前に「この人を後見人にしたい」という申立書を家庭裁判所に提出しなければなりません。費用も気になりますよね。
例えば、親が認知症という人向けの「法定後見」の場合は、申立てに約1万円。鑑定費用が必要な場合は、5~10万円ほど。さらに家裁への申し立てには、戸籍謄本、住民票、本人の財産目録や診断書など様々な書類が必要で、申し立てから審判確定までに約1~3ヵ月もかかります。こうしたことを考えると、知識だけでも早目に持ち、いざというときに慌てないことがとても重要だと思いました。
と言われても、この段階で、すでに頭がパニックになっている方も多いと思います。
でも本書は、ストーリー仕立ての漫画で、補足は文章と図で説明してくれるので、身構えなくてもすんなりと頭に入ってきます。また「成年後見制度」のエキスパートである弁護士11人によって書かれているので、キメ細かな情報を具体的に知ることができます。
さらに、漫画も章ごとに様々な人物設定で紹介されているので、自分に当てはまるのはどれかが、すぐにわかります。例えば、
・子供がいない老夫婦の場合
・親が認知症で兄弟仲が悪い場合
・知的障害のある子供の場合
・夫または妻が、認知症になった場合
・親族がアテにならない場合
・頼れる人が誰もいない場合
など
私のように頼れる人が誰もいない場合は、弁護士や専門家によって作られた成年後見センターなどの法人と「任意後見契約」を結ぶことも1つの方法だといいます。というのも、後見人が先に亡くなってしまったら、せっかく結んだ契約自体がパアになってしまうからです。
だから、後見人は少なくとも自分より20歳ほど若い人にお願いしたほうが良く、法人と契約を結んでおけば、もし担当者に何かあっても他の人に引き継いでもらうことができるというのです。
「任意後見人」に頼めることは、
・預貯金の払い戻しや不動産の管理
・介護保険の手続きや福祉サービスの契約
・病院の入院手続き
・公共料金や諸費用の支払い
など
通常、弁護士などにお願いした場合は月3~5万円で、やってくれるそうです。
うーん、結構、お金がかかるのね、と思ったのですが、これらは判断能力が低下して、後見が始まってからの支払いでOKとわかり、一安心。であれば、自分の判断能力が低下する前に、契約だけでも早目に結んでおくのも手かなと思いました。
さらに、死んだ後の病院の支払い、葬儀、永代供養など「死後の事務の委任」も別途、契約を結んでおけば、安心して最期を迎えることができそうです。
以前、独居老人が亡くなったとき、通帳にお金がありながらも、引き出せる親族がいないため葬式も出してもらえず、お墓にも入れないという記事を見たことがあります。せっかく残しておいた通帳のお金も、国庫に入ってしまいます。
今まで苦労して貯めたお金なのに、自分のために使えないなんて悲しすぎますよね。
とにかく「成年後見制度」は、知っておいて損にならない情報です。今は、まだいいやと先延ばしにせず、親や自分が元気なうちに、一度は目を通しておくことをオススメします。
レビュアー
「関口宏の東京フレンドパーク2」「王様のブランチ」など、バラエティ、ドキュメンタリー、情報番組など多数の番組に放送作家として携わり、ライターとしても雑誌等に執筆。今までにインタビューした有名人は1500人以上。また、京都造形芸術大学非常勤講師として「脚本制作」「ストーリー制作」を担当。東京都千代田区、豊島区、埼玉県志木市主催「小説講座」「コラム講座」講師。雑誌『公募ガイド』「超初心者向け小説講座」(通信教育)講師。現在も、九段生涯学習館で小説サークルを主宰。
公式HPはこちら⇒www.jplanet.jp