明治以来の日本文学のテーマに多かった「私」の問題は、第二次大戦が近づくにつれ重みを失っていき、終戦でいったん吹き飛んだ、そんな風に思ってました。が、大きな時代の転換と拡張し続ける世界に、人は必死でくらいつきつうろたえつつ、従来の苦悩もかつてと同じ重みでかかえ込んでいたのかなと。ただ時間とキャパは生身の人間において変わらないので、向きあえないまま状況の変化に流されていったのかなと。(カラスヤ)
レビュアー
1973年生まれ。漫画家。著作に『カラスヤサトシ』『カラスヤサトシのおしゃれ歌留多』『強風記』『喪男の社会学入門』『毎日カラスヤサトシ』『オレは子を見て育とうと思う』『カラスヤサトシの世界スパイス紀行』『おとろし』『カラスヤサトシの孫子まるわかり』『カラスヤサトシの戦国散歩』など多数。近刊にこの連載「文庫で100年散歩」を収録した『カラスヤサトシの日本文学紀行』があります。
近況:前回からこの漫画、さりげなく海外へ飛び出しております。